タイのチュラーロンコーン大学は、同大学の研究者らが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を99.99%殺菌できる短波長紫外線(UV-C)ランプの新バージョンを開発した、と発表した。10月14日付。
タイで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第一波が発生した昨年、チュラーロンコーン大学の麻酔学部、工学部、環境工学部、治金および材料工学部の教授らが、学内の殺菌し、同時に清掃スタッフの安全も確保できる技術としてUV-Cを使ったランプを発案した。
紫外線(UV)は10~400ナノメートルの波長帯を持ち、UV-Cはその中で波長が200~280ナノメートルの部分を指す。この波長帯は、「殺菌帯」として知られ、細菌、ウイルス、菌類に対する効果的な殺菌作用がある。UV-Cの放射線度が強いほど物質の表面の殺菌効果が強まり、必要な照射時間は短くなる。
以前の研究から1平方センチメートルあたり1.2ジュールの強度のUV-Cを10分間照射するとSARS-CoV-2を殺菌できることが分かっている。同大学の研究チームは、この値をもとにして、無人で殺菌できるロボット操作のUV-Cランプを開発。ロボットの開発には、タイの著名なロボットエンジニアであるアディサック・ドゥアングケウ (Adisak Duangkaew)氏とスマイルロボティクス(Smile Robotics)社が携わった。今回開発されたのは、このUV-Cランプの第三世代にあたる。
照射角度が限定されていた以前のバージョンと異なり、第三世代のランプは全方向への照射が可能になり、殺菌に必要な照射時間を1カ所につき3分に短縮した。また前世代に比べて操作が簡易になり、小型化されて移動や保管も容易になった。さらにインターネットや、iOSやアンドロイドの2G携帯ネットワークでの操作も可能。最新のランプは、タイ国内の多数の病院で使用されている。
環境工学部のジェニュック(Jenyuk)博士は、「複数の照射距離、ガラスやプラスチック、金属など様々な表面素材、コロナウイルスよりさらに強力な病原菌などを対象にテストを行い、このランプが高い殺菌効果を持つことを証明できた」とUV-Cランプの性能に自信を示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部