2021年11月
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食品廃棄物から新しい価値を抽出する

新しい価値化技術を使えば、業務用食品製造者が廃棄物を削減し、それを高価値の製品に変えることができるかもしれない。

AsianScientist - 十分な食料の確保は、ずっと人類の生存に欠かせないことであった。人類は長い時間をかけて狩猟・採集から農業、そして都市を広げて進化してきたが、食料が必要であることに変わりはない。むしろ、必要性は高まっている。

現在、産業界全体が増え続ける人口を支えようと食品を生産し流通させているが、飢餓は依然として世界中に存在している。さらに、気候変動によって環境条件は不安定となり、現在は余裕をもって食料を得ることができる人々にとっても食料不足は迫り来る課題となっている。

そのため、毎年16億トン以上の食品(生産されるすべての食品の3分の1)が廃棄されたり失われたりしていることを知ったならば、驚くかもしれない。食品廃棄の多くは消費者によるものと思われているが、実際にはそのほとんどがサプライチェーンの最初に発生し、食品ロス全体の32%は生産段階で起こっている。

企業の社会的責任・環境的責任の増大と相まって、食品廃棄物の増加は、新しく食品を価値化する市場を生み出している。価値化により、生産者と製造業者が廃棄を削減するだけでなく、廃棄物を燃料、バイオプラスチック、医薬品などの新興市場の需要を満たす高価値製品に変える機会が生まれる。

シンガポールに拠点を置くIPI(Innovation Partner for Impact)によるホワイトペーパー「価値化で価値を引き出す:食品廃棄物に取り組むテクノロジー」(the Unlocking Value with Valorization: Technologies to Tackle Food Waste)は、現在の食品廃棄市場と既存のテクノロジーを分析し、この分野について詳しく説明している。

世界の動向

全世界で企業が頭を寄せ合い、食品廃棄の問題に取り組み、もっと環境に優しく、費用効果の高い食品廃棄管理方法を探っている。

たとえば、食品廃棄を解決する実行連合は、2030年までに小売レベルと消費者レベルで食品ロスを半減させるという野心的な目標を掲げて2020年に設立された。実行連合には世界最大の14の小売店と製造業者が参加しており、企業に対し、透明性と説明責任を高めるために食料廃棄を測定し、報告し、管理することを奨励している。

世界中の政府が食品廃棄物を削減しリサイクルするための法律を施行しているため、この取り組みは公的に義務付けられた責任にもなりつつある。たとえば欧州連合は、すべての加盟国に対し、サプライチェーンのすべての段階で食品廃棄物を削減し監視することを義務としている。

同様に、シンガポールの2019年資源持続可能性法には、廃棄物ゼロ経済への移行に向けた重要な部分として食品廃棄物管理が含まれている。シンガポールの事業体による食品廃棄物ソリューションの実施を助成するために、食品廃棄物基金も設立された。

2030年までに年間の食品廃棄物は21億トンに達すると推定されているため、今日、公的部門と民間部門の両方とも持続可能な食品廃棄物削減政策を制定することが求められている。

新しい技術が可能性を広げる

廃棄物削減は最優先事項であるが、特に生鮮食品の場合、食品廃棄物を完全にゼロとできる可能性はほぼ望めない。従来の廃棄物管理システムは、消費の後の余剰食品や傷んだ食品を廃棄物としてリサイクルすることを中心として展開している。

しかし、食べ残された食品には様々な種類の材料が含まれ、傷みの程度も様々である。異なる種類の材料を処理するには既存の技術には限りがあるため、最終製品は肥料や動物飼料など、低価値のものが多い。

一方、業務用食品生産の副産物である廃棄物の場合はかなり均質であり、材料、量、生産場所が予測可能であり、価値化が可能な重要な原料となる。

価値化により、企業は義務化が進む廃棄物削減要件に従うことができるだけでなく、収益性の高い取り組みとして事業的にも意味を持つ。

テクノロジーの現状を調べたところ、処理方法が進歩したため廃棄物の傾向は企業に利益をもたらすようになっていることがわかった。新しい価値化技術を使えば、医薬品、栄養補助食品、化粧品、食品で広く使用されている高価値の生理活性化合物の抽出が可能になる。

さらに、新しい方法では、環境に優しく持続可能な設計へのシフトが見られる。企業が現在使用している方法は通常、有毒な化学物質を使い、大量の廃棄物が出てくるが、新しい方法は天然化学物質を使用し、廃棄物をゼロにすることを目指している。

食品廃棄物逆手に取る

生産からの食品ロスは、かつてはすぐに処分され、または低価値の製品に加工されたが、新しい食品価値化技術が出現するにつれ、今や貴重な資源になりつつある。食品の生産者と製造業者は専門家や既存の技術プロバイダーと相談して、規制要件に最適な価値化方法を開発し、新製品の開発から利益を最大化する方法を調べることができる。

食品廃棄物市場における現在の機会、課題、トレンドさらに理解するために、あるいは今日利用可能な新しい食品価値化技術について詳しく知るには、ホワイトペーパー「価値化で価値を引き出す:食品廃棄物に取り組むテクノロジー」をダウンロードされたい。

参考サイト(外部サイト):
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScpz281RlnCGeoI-VV802REYaS7dbWDibe05q3-fER3kcegnw/viewform

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