2021年11月
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慢性創傷診断・治療でウェアラブルスマートセンサーを開発 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)は10月21日、シンガポールの研究者グループがリアルタイムでの慢性創傷のリモート診断を可能にするウェアラブルセンサーを開発したと発表した。研究成果は、学術誌 Science Advances に報告された。

NSUの生体医工学部、シンガポールのヘルスイノベーション、医療技術研究所(iHealthtech)の研究者らが、シンガポール総合病院と共同で慢性創傷のモニタリングができるウェアラブルスマートセンサーを開発した。世界で初めて慢性創傷に特化したこのセンサーは、ワイヤレスで体温、pH、バクテリア、炎症の要因などを15分以内に感知し、リアルタイムの精確な診断を可能にする。

ウェアラブルスマートセンサーの詳細 (写真提供:NUS)

人口の高齢化にともない、糖尿病性足病変や慢性静脈不全による足の潰瘍(かいよう)など、非治癒性の創傷を患う患者が増加しており、世界人口の2%がこうした創傷を患っているという統計もある。慢性創傷は感染や外傷などにより回復が難しく、患者は痛みやストレスを患いがちである。また、糖尿病性足病変による足の切断などの重篤な事態を防ぎ創傷の回復をはかるためにはタイムリーな治療が欠かせないが、そのためには度重なる治療が必要で医療費がかさむ。

従来の慢性創傷の診断と治療は、目視による診断や創傷滲出(しんしゅつ)液によるバイオマーカーのチェックが主であり、検査の結果がでるまで2、3日かかることもある。こうした問題を解決するためのセンサーも開発されてきたが、センサーで感知できるマーカーの種類に限りがあった。今回開発された「免疫センサーバンドエイド」(sVeCar)は、創傷感知バンドエイド、マイクロチップ、モバイルアプリからなり、感知可能なバイオマーカーを拡大するとともに、創傷滲出液の収集が可能な微小流体デバイスを備え、免疫センサー機能も装備している。バンドエイドの機能は、潰瘍のサイズや形状に影響されない。

iHealthtechの主任であるリム(Lim)教授は、「遠隔診療とデジタル診療の組み合わせは、医療業界と社会のあり方を大きく変える可能がある。特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックでソーシャルディスタンスがその重要性を高めました。使い易い診断・予知ツールを開発し、精確でデータ駆動型の患者管理を目指している」と語る。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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