2021年12月
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血液がんの化学療法、効果がない理由は遺伝子変異 シンガポールの南洋理工大と総合病院が発見

化学療法が一部の血液がん患者に対して失敗する主な理由が、重要な遺伝子の変異であることを、シンガポールの南洋理工大学(NTU)と総合病院(SGH)による研究チームが発見した。12月6日に発表された。

研究チームのメンバーら (写真提供:NTU)

シンガポールがん登録最新データによると、血液がんの一種であるリンパ腫は、シンガポールの男性において5番目、女性においては6番目に多いがんである。ホジキリンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大きく分けられるリンパ腫は、しばしば化学療法で治療される。しかし激しい進行性の非ホジキリンリンパ腫の患者の大多数は、伝統的治療法に反応しなく、始めのうちは反応するサブグループの患者も再発し、致命的な結果へと進行する。

そこで研究チームは高度な遺伝子シーケンシング技術を用いて、化学療法が失敗した患者のサンプルからがんを発症する遺伝子異常をマッピングした。その結果、細胞増殖のシグナルの進行と伝達に関わるタンパク質の一種であるDDX3X遺伝子の変異が、がん細胞の回復力の要因である可能性を発見した。

さらなる調査により、体内において成長と増殖を含む生理活性を妨げる物質であるSTAT3阻害剤が、標準的な化学療法剤よりも効果的に、DDX3X変異または変化したDD3Xを伴うリンパ腫細胞を死滅させることも発見した。

これらの発見により、STATの活動を防ぐ新しくさらに効果的な薬剤が開発され、DDX3X変異のある非ホジキリンリンパ腫患者の生存率を高めることが期待される。非ホジキリンリンパ種患者に対する化学療法の効果を詳しく計測するために、将来そのような変異がテストできるようになるかもしれない。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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