2022年01月
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亜鉛と酸化亜鉛の複合材料...細菌等を寄せ付けない3つの技術開発

良い衛生状態を保つには、手を洗うだけでは不十分である。今回のテクノロジー商品は、細菌や病気を寄せ付けない新しい方法を紹介する。

AsianScientist - どの病院であっても、一歩入れば内部の空気には鼻をつくような、ほとんど不快な臭いがある。その臭いの一部は、有害な細菌が患者から別の患者に広がるのを防ごうとして、病院が衛生を保つために使用するアルコールによるものである。

人口密度の高い都市では、衛生状態を良好にする必要性がかつてないほど重要になっている。病気の原因となる微生物は抗菌剤に対する耐性を進化させているため、病気の治療は多くの場合複雑になっている。たとえば、世界保健機関 (WHO) は2018年に、世界中で推定558,000人が薬剤耐性結核や多剤耐性結核(肺に影響を与え、生命を脅かす細菌感染症)を患っていると報告し、この病気により23万人が死亡したと推定されている。

このような感染性病原体から身を守るために、衛生状態を高いレベルに保つことのできるソリューションが求められている。ここでは、有害な細菌を検出して駆除し、病気から身を守る革新的な方法を見せてくれる3つのテクノロジー商品を紹介する。

清潔を保つ表面

感染の原因の多くは、汚染された表面との接触である。多くの病院や介護施設などの建物の中では、家具、壁、設備などの表面に感染性微生物が潜んでおり、院内感染の一因となっている。

微生物の増殖に耐性を持つ表面を作成するために、広範囲で微生物を殺すことのできる亜鉛と酸化亜鉛の複合材料が開発された。他の抗菌溶液とは異なり、この材料は抗菌耐性を誘発させない。その代わり、この複合材料は、水や空気があれば、活性酸素種 (ROS) を生成して微生物を殺す。生成されたROSは、不快な臭いの原因となる有機化合物を分解して悪臭を取り除くこともできる。

この溶液は、プラスチック製品、塗料、コーティング製品、織物、ペットケア製品、さらにはパーソナルケアや食品と接触する物品に利用することができる。日常のアイテムに抗菌性を与えることで、表面の微生物の増殖による感染のリスクを減らすことができる。

爽やかな息吹

汚染された表面への接触だけでなく、細菌は呼吸する空気を通して直接人々に到達することもある。結核やはしかなどといったいくつかの最も危険な病気は、主に空気を介して伝染する。

新鮮で清潔な空気を保つことのできる新しいテクノロジーが考案された。この溶液は、光増感剤化合物と抗菌ポリペプチドを混ぜ合わせたもので、抗菌効果と空気浄化効果を長く保つことができる。この溶液は自然光の作用により活性酸素種を生成し、バクテリアや真菌を含めた多くの種類の微生物を根絶させる。この製品は、不快な臭いの原因となるホルムアルデヒドなどの有機化合物を除去することも証明されている。

現在、この技術はコンクリート壁用のアクリル塗料、無毒性消毒剤、そして抗菌織物としての用途を持つ。この溶液は皮膚や目を刺激しないため、エアフィルター、包帯などの医療製品、さらには水処理液にも使用できる可能性を持つ。

食品の汚れを調べる

空気がきれいであっても細菌は分かりにくい場所に潜み、思いもよらず食事の中に出てくることがある。不衛生な方法で調理をすると食品汚染につながり、さらには食品媒介疾患を引き起こすことがある。

空気がきれいであっても細菌は分かりにくい場所に潜み、思いもよらず食事の中に出てくることがある。不衛生な方法で調理をすると食品汚染につながり、さらには食品媒介疾患を引き起こすことがある。

食品汚染は肉眼では見えないことが多く、検出には特別な検査と高価な機器を必要とする。これらの検査の費用と複雑性を抑えるイノベーションがあれば、大企業にとっても中小企業にとっても大きなメリットとなる。ReportLinker社が実施した市場調査によると、世界の食品安全性試験市場は2023年までに246億ドルに成長し、年平均成長率は7.7%になると予測されている。

表面の衛生状態をすばやく評価するために、危険レベルの汚染物質を検出すると色が変わる紫色のスプレーが開発された。このテクノロジーは、サルモネラ菌やリステリア菌などの典型的な食品媒介性病原体や、生の鶏肉からの肉汁などといった有機汚染物質を検出できる。ATPふき取り検査をはじめとする業界標準の検査と比較して、新しく開発されたスプレーの検査性能は同程度でありながら価格はかなり安い。

それに加えて、化学薬品から作られる溶液は室温でも貯蔵寿命は長く、安定している。さらに、スプレーは使用が簡単で安全であり、特別な訓練や機器を必要とせず、さまざまな産業で問題なく使用することができる。この化学物質を他の形で使用すれば、独自の応用製品を開発することができる。

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