2022年01月
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自律型車両でラストワンマイル解消へ...テクノロジーで輸送が進化

エネルギー貯蔵の改善から人工知能(AI)に至るまで、テクノロジーの進歩は将来のモビリティソリューションを実現する鍵となる。

AsianScientist - 未来の街並みを想像するとき、多くの人は光り輝く大都市、空飛ぶ車、高層ビルを思い浮かべるだろう。これらは全て 空想科学小説の定番である。しかし、現実はそれほどバラ色ではない。実際には、世界中で都市化が広がりつつも、多くの都市は増え続ける人口に対応できるだけのインフラを持たず、過密、非効率的な交通機関、交通渋滞などの問題がもたらされている。

交通機関の問題を緩和する方法として、たとえば自家用車を購入するなど、私的な交通手段が注目されることが多い。しかし、逆に、このような手段は都市化へ対応しようとする取り組みに、汚染や燃料需要の増加などの問題を加えてしまう。走行する自動車の増加は疑いなく交通渋滞の悪化をもたらすことから、明らかに持続可能性の高いモビリティソリューションが求められる。

協力してラストワンマイルを渡る

「ラストワンマイルの問題」というものがある。これは商品や人を移動させる場合に直面する問題であり、人や物を目的地に運ぶという課題、つまりドアツードアの移動性を意味する。たとえば、公共交通機関は通勤者を目的地の近くまで運ぶ。けれど目的地の玄関まで行くには、徒歩またはタクシーを呼ぶ必要がある。

自律型車両は目的地に人々を届けるシャトルバスとして機能することができるので、ラストワンマイルの問題に対するソリューションとなり得る。シンガポールでは、Smart Nationイニシアチブを背景に自律型車両が試験中であり、高齢者などのグループにオンデマンドサービスおよび高い移動性を提供している。これは、国の高齢化を考えると重要な考慮事項である。

ただし、自律型車両は、複雑な交通ルールに従う必要のある交差点や環状交差点など、都市に共通してみられる交通状況にうまく対応できなければならない。したがって、交差点での正常かつ迅速な意思決定は、交通の流れを安全かつ円滑なものとするにあたり重要である。

この問題を解決できる技術の1つは、自動シャトルバスが予定ルートや交差点での決定などの情報を相互に共有できるようにする協力自動運転である。共有した後は、他の車両の決定や交通状況に応じて調整を行うことができる。この「集合精神」のようなテクノロジーは多くの自動シャトルバスの間の調整を支援し、効率性と安全性を高めることができる。

ロボットを顧客の玄関先に送る

ラストワンマイルの問題もサプライチェーン(供給網)を悩ませている。距離は比較的短いながらも輸送コストの半分以上を占めている。スタッフ不足や貧弱なインフラなどの事項が問題を作り上げ、効率性と顧客の印象に悪影響を与えかねない。ラストワンマイルの問題が作る問題の1つは配達の遅れであり、これは企業の今後の収益を悪化させるかもしれない。

オンデマンドデリバリーロボットは、物流の中のラストワンマイルの問題を克服するための優れたオプションとなりえる。だが、絶えず変化する環境に高度に適応できなければ、デリバリーロボットはうまく機能することはできない。

3Dセンサー、深度カメラ、ステレオビジョンカメラで構成される視覚認識モジュールがあれば、ロボットはすぐ周りにある3D環境をマッピングできる。コンパクトで一体化しやすく、メンテナンスが不要なこのモジュールがあれば、ロボットは障害物、対象物、人間を動的に認識できる。さらに、このモジュールを使用するとロボットは充電スタンドを認識できるため、外出先でも電力を供給できる。

電池に戻る

将来のモビリティソリューションでは、必然的に電池への依存度が高まるので、電池の容量、寿命、信頼性の能力は高いものでなければならない。これに加えて、電池の安全性をさらに重要視することが、これらのモビリティソリューションに対する大衆の信頼を得る鍵となる。

エネルギー密度が高いリチウムイオン電池は、モビリティソリューションでは一般的な選択肢となっている。しかし、最近はリチウムイオン電池の火災に関するニュースが取り上げられていることから、安全のために温度管理が重要である。さらに、最適な電池性能を確保するには、適切な温度管理も重要である。

電池熱管理技術は、それぞれの電池と均一に相互作用する液体冷却システムを作ることができる。冷却液を均一に分布し、適切な作動温度を保つことにより、システムの安全性を高め、電池の寿命を延ばす。この技術は、標準的な製造プロセスを使用してコンパクトで軽量な電池を簡単に製造することもできる。

一般的に使われるリチウムイオン電池と比較してエネルギー貯蔵容量は2倍であるリチウム硫黄電池もまた、ゲームチェンジャーとなりそうである。硫黄を使用することで、電池の費用効果と寿命を高いものとしている。これらの特性を組み合わせることで、リチウム硫黄電池は、携帯型電子機器から自律型車両まで、環境への負担を抑えながら、低コストで長期間にわたってあらゆるものに電力を供給する優れた選択肢となる。

未来のモビリティの目標の達成には困難があるが、ハードウェアとソフトウェアの両方にまたがるテクノロジーがあればその目標に近づくことができる。明日のテクノロジーを今日実現する、輸送バリューチェーン全体にまたがる包括的な一連のソリューションについて知りたければ、シンガポールのIPIのFuture Mobility(下記参照)を閲覧していただきたい。

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