2022年01月
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量子コンピューティングから神経科学まで...シンガポール、若手科学者賞を授与

量子コンピューティングから神経科学まで、シンガポールの科学界に貢献した3人の若き科学者が最高の栄誉を得た。

AsianScientist - 脳が食欲を起こさせる方法を見抜き、次世代量子コンピューターを構築し、人工知能(AI)のビッグデータへの依存を減らす...。これらは2021年12月10日に大統領官邸で開催された式典で表彰された若きシンガポール人科学者らが達成した科学界の大きな躍進である。

若手科学者賞 (YSA) は様々な分野で世界レベルの専門家となる大きな可能性を見せている35歳未満の研究者に授与される賞であり、シンガポール国立科学アカデミー (SNAS) が主催し、シンガポール科学技術研究庁 (A * STAR) が支援している。

2021年の同賞は以下の3氏に贈られた。

  • A * STARの分子細胞生物学研究所 (IMCB) のサラ・ルオ (Sarah Luo) 博士
  • シンガポール国立大学 (NUS) の物理学部のイヴォンヌ・ガオ (Yvonne Gao) 博士
  • シンガポール南洋理工大学 (NTU) コンピュータ理工学部のザング・ハンワング (Zhang Hanwang) 博士

ルオ博士は神経科学者であり、摂食行動を調節する脳内の新しい領域を発見したことが評価された。この領域をマウスで活性化させたとき、マウスは空腹でないときでさえ、食物消費を増加させた。ルオ博士は IMCBにある自身の研究室で、食欲と代謝調節における脳の役割の研究を続けている。

ルオ博士は表彰式で公開された映像の中で、「健康は食べ物で決まると誰もが分かっています。現代はカロリーの高い食べ物がいつでもどこにでもあるので、将来の世代が代謝性疾患にかからないようにすることがますます重要になっています」と述べた。

ガオ博士は、性能を損なうことなく量子コンピューターをスケールアップするために必要な堅牢かつスケーラブルなハードウェアを開発したことが受賞理由。ガオ博士はNUSの量子回路研究工学ワークグループを率いており、今までの研究で普遍的な絡み合い操作に関する特許を既に2つ取得している。

ガオ博士はビデオで「量子コンピューティングには、私たちの生活の多くの部分を変革する力があります。私はこの仕事で、信頼性が高く安全なアクセスを可能にするローカルな量子ハードウェアを構築する基盤を確立したいと考えています」とコメントした。

最後に、コンピュータサイエンスの他の大きな進展についてもYSAが授与された。対象となったのは、次世代人工知能 (AI) モデルの一般的な因果関係のフレームワークを構築するというザング博士の研究である。同博士のフレームワークを使用するとAIは環境に積極的に介入し、オンデマンドでデータを収集し、新しい データを生成する。すると、ビッグデータほどのサンプル数を必要とせずに済む。

「現在、AIのデータを持つのは大企業や大国です」とし、「私の研究を利用すれば、小国でも強力なAIを構築することができます」とザング博士は述べた。

受賞者らは、同国のヘン・スイキャット(Heng Swee Keat)副首相から賞を授与された。世界的な懸念を解決するために科学の進歩が不可欠な世の中では、次世代の科学者の才能を称え、鼓舞させるYSAのような賞は歓迎すべきものである。

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