2022年02月
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肝細胞がんで腫瘍の不均一性の全体像を明らかに シンガポールでコホート研究

シンガポール国立がんセンター (NCCS) とシンガポールゲノム研究所 (GIS) の研究者らは、アジア諸国の協力者と共同で、肝細胞がん (HCC) 患者を対象とした大規模コホート研究を行い、肝細胞がんにおける腫瘍の不均一性の全体像を明らかにしたことを発表した。2021年12月13日付。研究成果は、科学誌National Science Review に掲載された。

本研究で得られた肝がんの進化に関するデータは、Singapore Oncology Data Portalを通じて一般に公開されている。

肝細胞がんは発症数では世界で7番目に多く、がん種別の死因としては第4位となっている。がんが進行過程で多様化し、複数のサブタイプが共存する不均一な状態になることが多いため、全身療法に有効な予測バイオマーカーもなく、治療が難しい。NCCSとGISによる共同研究チームは肝細胞がんの腫瘍内不均一性 (ITH) の分子多様性の理解と、それらの知見を患者の層別化や治療の指針として利用することを目的とし、アジア諸国の肝細胞がん患者を対象としたコホート研究を行った。

研究では、ゲノムDNAの変異による遺伝的ITHと転写によるトランスクリプトームITHの両方について、同じ腫瘍の異なる領域で変動していることを発見した。このような肝細胞がんの進行のプロセスは、単一グループの分子標的のみに対処する治療法では不十分なことを説明し、併用両方が治療効果を高める可能性があることを実証している。

本研究を主導したGISの元主任研究員のザイ・ウェイウェイ (Zhai Weiwei)博士は研究について「肝細胞がんにおける腫瘍の不均一性の全体像を初めて描き出し、患者の予後と治療に腫瘍の進化に関する情報を活用する基礎となるものだ」と話している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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