求められる特性に応じた材料をアルゴリズムによって高精度に特定する、従来の設計プロセスとは逆向きとなる方法が発見された。1月6日付発表。
シンガポールと米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究技術アライアンス(SMART: Singapore-MIT Alliance for Research and Technology)の低エネルギー電気システムズ(LEES)学際研究グループ(IRG)の研究者らが、MIT、シンガポール国立大学(NUS)、シンガポール南洋理工大学(NTU)と協力し、発見に至った。この研究成果は、学術誌 Matter に掲載された。
材料科学と研究において、特定の目的や使用事例に合わせた特性や性質をもつ材料と化合物を作成する技術は、長年求められてきた。研究者らは、材料特性データベースを介した材料スクリーニングを用い、ユーザーの求める機能特性をもつ限られた数の化合物を発見してきた。しかし必要な計算コストが高いため、ハイパフォーマンスコンピューティングでも理論上の材料分野における徹底的な検索ができない。
これに対し、全般的逆設計と名付けられた新しい方法は、従来のプロセスとは逆転し、目的の特性と性質を入力しアルゴリズムの最適化を使用して、新しい材料や化合物を生み出す。
フォトニクスの分野で益々小型化し強力になる装置の設計にとって、重要な発見である。今までは設計者が形状や構造を考えてから作り出されるため、その他の可能性が見落とされてきた。全般的逆設計は、特定の元素や結晶構造に限定されず広範囲にアクセスするため、最適な形状・構造・化学組成・その他の特性をもつ装置の製造を可能にする。
SMART研究者らによって開発されたアルゴリズムは、材料データベースの5万点以上になる化合物から、化学・構造・特性間の複雑な関係を学習し、ユーザーの望む特性の新しい化合物や材料を導き出す。
トニオ・ブオナシシ(Tonio Buonassisi)LEES主要研究者・MIT機械工学部教授は今回の発見について「材料研究分野における劇的な開発である。材料科学研究者は、ただ求める特性を入力するだけで新しい化合物や材料を発見する、効果的で包括的な装置を得た」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部