2022年02月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2022年02月

微生物でアイスクリームを開発、従来の製品と同じ味と食感に シンガポールA*STARが民間と連携

シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)のパートナーで、アメリカの食品テクノロジーベンチャー企業のパーフェクト・デイ(Perfect Day)は、A*STARがもつ味覚分析、タンパク質研究の知見を活用し、従来の乳製品と同じ味と食感をもつアイスクリームなどの代替食品を微生物の生成物から開発することに成功した。1月3日にA*STARウェブサイトが公表した。

動物由来の食品よりも資源使用量が少なく、環境的に持続可能な製品として大きな可能性を秘めている。

シンガポール国内では持続可能な食品開発に向けて、科学技術を活用する動きが強まっている。同国には農業用地などの天然資源がほとんどなく、食料の90%を輸入している。同国が食料供給と安全性に影響を与える外的ショックや世界的トレンドに対して脆弱性をもつことから、代替食品の開発支援に力を入れている。

また世界的にも動物性タンパク質の代替品に対する需要は高い。ボストン コンサルティング グループ(Boston Consulting Group)らが昨年3月に発表したレポートによると、肉、卵、乳製品、水産物の代替品市場は、2035年までに少なくとも2900億米ドル(3920億シンガポールドル)に達する見込みだという。

しかし、科学技術研究庁生物医学研究評議会 (A*STAR BMRC)の最高責任者補佐 を務めるウン・ハック・ホイ(Ng Huck Hui)教授によると、このような代替食品が主流になるにはまだ時間がかかるという。代替食品がより多くの消費者の食卓に上るようになるには、こうしたフードテック企業への投資を拡大し、他の新興企業や企業、学術研究機関と協力できるような活気あるイノベーション・エコシステムを整備することが必要となる。

そこでA*STARはここ数年、政府所有の投資会社テマセク(Temasek)や食品庁(SFA)、またシンガポール南洋理工大学(NTU)をはじめとした研究開発エコシステムと連携し、ベンチャー企業支援や研究開発施設、官民パートナーシップのプラットフォーム、研究開発プログラムを設立してきた。食品業界の変革を牽引し、先端製造業、バイオ医薬品、食品製造業などの既存産業で新たなビジネスチャンスを獲得することを狙う。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る