タイの遺伝子工学バイオテクノロジーセンター・国立科学技術開発庁(BIOTEC-NSTDA) は1月27日、グローバルヘルス技術革新基金(GHIT)より、新規抗マラリア薬開発のために2,700万バーツ(約9,500万円)の研究費を獲得したことを発表した。
既存の抗マラリア薬は薬剤耐性原虫の出現が課題となっており、本研究ではこの課題を解決するための、新しいドラッグデザインアプローチが計画されている。
その手法は、標的機能を阻害する薬剤ではなく、標的となるタンパク質自体を破壊する標的タンパク質分解誘導化合物(PROTACs)を開発するものだ。PROTACsは、2つの重要部位をもち、1つは標的タンパク質と結合する部位、もう1つはユビキチンE3リガーゼと結合する部位である。PROTACsが標的タンパク質とユビキチンE3リガーゼに結合し、両者を物理的に近づけることで、標的タンパク質にユビキチン修飾を引き起こし、分解に導くという仕組みだ。
(提供:NSTDA)
この方法は、これまで創薬ターゲットとして考えられていなかったタンパク質に対してPROTACsを設計できるという利点がある。マラリア原虫のライフサイクルを通じた新しい創薬ターゲットに作用する薬剤の創出につながるため、マラリア撲滅に大きな貢献をもたらす可能性がある。
本プロジェクトには、BIOTEC-NSTDAが代表機関となり、日本のファイメクス株式会社が製品開発パートナーとして参画する。BIOTECのフロンティアバイオデザイン・生体分子工学研究チームのニチポール・スリモンコルピサック(Nitipol Srimongkolpithak)博士らが、PROTACs抗マラリア薬を設計するためのプラットフォームを構成する予定だ。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部