シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)は2月18日、同国のスタートアップ企業I.O.T.Work社と協業し、ワイヤレスで電力を供給するセンサーネットワークを使って、屋内外で使用できる資産管理システムを開発し、製品化すると発表した。
シンガポールで設立し、同国に拠点を置くI.O.T.Workz社は、IoT(モノのインターネット)を利用して、ビジネスやサービスでかかえる問題の解決を事業として行っている。同社は実用的なアプリケーションを開発するため、A*STARが所有するワイヤレスで電力を供給する資産管理システムのライセンスを所持している。
A*STARの研究開発力とI.O.T.Workz社の強みであるソリューションビジネスを組み合わせることで、病院内にある数百台レベルの車椅子を自動で追跡できるシステムを開発した。この資産追跡システムは、2021年4月からシンガポールのクー・テック・プアット病院(KTPH)にて150台の車椅子でテストされている。
車椅子には、ビーコン(Bluetoothの信号を使ったデバイス)としてワイヤレスタグが取り付けられ、タグは病院内に配備されたネットワークデバイスに位置情報を送信する。これらのデータは、モバイルアプリケーション上で見ることができ、病院スタッフは車椅子の位置を監視して追跡できる。
また、このアプリケーションにより、車椅子の数が少なく補充が必要な状況や車椅子が余っている状況を知ることができる。これは病院スタッフの生産性を向上させると同時に、患者のために車椅子をいつでも利用できるよう確保するのに役立つ。
アプリケーションの表示や画面は直観的に使いやすくなっており、車椅子のサービス予定が一目で分かり、病院内にある車椅子の全体的な生産性と安全性を高めている。プロジェクトでは、病院の車椅子を追跡することに加えて、ワイヤレスで電力を供給することができる本システムの潜在的な適用先として、産業用IoT、ハイテクビルの管理、環境モニタリングを想定している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部