シンガポールの南洋理工大学(NTU)機械・航空宇宙工学部のタン・ミン・ジェン(Tan Ming Jen)教授は、3Dプリントの積層造形技術を使って建設業界に革新をもたらしている。同大学が3月10日に発表した。
金属の機械特性の研究バックグランドを持つタン教授の新たな挑戦は、シンガポール3Dプリンティングセンター(SC3DP)の建築部門のプログラムディレクターに任命されたときに始まった。
(提供:NTU)
タン教授は、多国籍コングロマリット企業Chip Eng Seng Ltdと連携して、3Dプリントが可能な流体コンクリートとロボットを開発し、世界で初めて9時間以内に家具なしのバスルームを組み立てた。
この新しい技術は、焼却炉から発生する不要なフライアッシュから作ったコンクリートと専用のプリント機械を用いることで、プレハブの家具なしバスルームの製造時間を従来工法より30%削減させた。これは建設業界から排出されるCO2の削減や製造に関わる労力の削減に貢献する。
タン教授は、「印刷されたバスルームは、冷却と断熱に効果がある格子構造を持つため、これまでのバスルームと比較して重量が30%ほど軽くなります」と説明する。タン教授は今後、業界パートナーと協力して、この技術を多層構造の建築物へ適用させるとともに、商業化させることを計画する。
タン教授は現在、NTU、HP社、シンガポール国立研究財団の3つの機関が共同で運営するHP-NTUデジタル・マニュファクチャリング・ラボのディレクターを務めており、デジタル機器の製造と3Dプリント技術に関する研究プログラムを管理する。
また世界経済フォーラムのグローバル・フューチャー・カウンシル(Global Future Council on Advanced Manufacturing and Production)のメンバーとして、高度な製造技術とその将来の事業運営やモデルの潜在利用について助言する。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部