オーストラリア政府の「Aus4Inovation」プログラムは4月18日、ベトナムのトラムチム国立公園における絶滅危惧種を含む生態系の保護を目的として、データ収集・活用を行うための共同研究に対する支援を発表した。オーストラリアとベトナムの研究者によるこの共同研究は、生物種の保護だけでなく、公園内の水質や火災のモニタリングにも活用できる可能性がある。
ベトナム・ドンタップ省にあるトラムチム国立公園は、絶滅危惧種に指定されているオオツルをはじめ、130種以上の魚類と230種以上の鳥類が生息する非常に多様な生態系を持つ。しかし、トラムチム国立公園では、資源や技術の制限により、データ収集や、管理介入による影響の監視・評価が困難であった。
ベトナムのトラムチムの風景 (提供:豪政府)
こうした課題に対してAus4Innovationは、トラムチム国立公園の環境管理システムを構築するため、オーストラリアのウーロンゴン大学とベトナムのホーチミン工科大学の共同研究の支援を決定した。オーストラリアとベトナムの科学者が協力し、公園内の広い範囲を定期的に調査するために、さまざまな「IoT(モノのインターネット)」デバイスを活用する。集められた大量のデータは、人工知能(AI)や機械学習の技術を応用して処理される。このシステムにより公園の生態系の健全性をリアルタイムで把握できるようになり、生物種の保護だけでなく、水質のモニタリングや火災警報システムも改善される予定である。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部