シンガポールの 南洋理工大学(NTU)は5月10日、米国のペンシルバニア大学、カリフォルニア州立大学との共同研究で、サイコパスと非サイコパスとの間に生物学的な違いが存在することを明らかにしたと発表した。
磁気共鳴画像装置(MRI)を用いて脳を調査した結果、サイコパスは非サイコパスの対照群と比較して、前脳の線条体領域が平均で約10%大きいことが判明した。これまでの研究で、サイコパスの脳では線条体が過度に活性化していることが指摘されていたが、その大きさが行動に及ぼす影響について決定的なことは分かっていなかった。
(提供:NTU)
サイコパスとは一般的に、自己中心的で反社会的な性格をもつ人物と定義される。彼らは通常、自分の行動に対する後悔の念の欠如、他者への共感の欠如、そして犯罪傾向によって特徴付けられる。線条体は、大脳皮質と視床・脳幹を結びつけている大脳基底核の一領域で、運動および行動の企画、意思決定、動機づけ、強化、報酬の認識など、認知に関する多面的な調整を行う。
反社会的行動や犯罪行動における生物学的側面を理解することは、既存の行動理論の改善だけではなく、法整備や治療法の選択に新たな情報を提供することにもつながると期待される。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部