2022年06月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2022年06月

拡張性心不全の治療法開発へ産学官で共同研究 シンガポール科学技術研究庁

シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)は5月11日、拡張性心不全(HFpEF)など、心血管疾患背景にあるメカニズムに関する共同研究契約を締結したと発表した。

共同研究を行うのは、A*STARのシンガポール遺伝子研究所(GIS)、バイオインフォマティクス研究所(BII)、シンガポール国立心臓センター(NHCS)、シンガポール国立大学(NUS)、および、ノボノルディクスファーマ(Novo Nordisk Pharma)社だ。

心血管疾患は、世界的にもシンガポールにおいても主要な死因の一つだ。特に高齢者人口が増加する同国では、HFpEFが深刻な社会問題となりつつあるが、患者の予後を改善する治療法はまだ確立されていない。さらに、欧米人と比較して、アジア人はHFpEFの発症年齢が若いという特徴がある。

この共同研究では、HFpEFの新規治療法の開発を目的とし、A*STARが主導した国内の複数の研究機関によるトランスレーショナル循環器研究プログラム「アジアにおけるトランスレーショナルリサーチと循環器系臨床試験のためのネットワーク」(ATTRaCT)の心不全患者コホートを利用する。臨床画像、分子生物学的表現型、そして臨床的表現型の統合により、アジアのHFpEF患者について基礎的な生物学的理解の促進や病態に基づいた患者の細分化を行うために必要なバイオマーカーについて包括的な研究を実施する。

ATTRaCTのプログラムリーダーであり、GISの分子エピゲノムおよびクロマチン組織研究所のシニアグループリーダーとNUS医学部の心血管疾患トランスレーショナルリサーチプログラムのディレクターを兼任するロジャー・フー(Roger Foo)教授はHFpEFについて次のように述べた。

「HFpEFは公衆衛生上の重要性が増している疾患でありながら、現在までに有効な治療法がなく、さらなる研究が求められています。この共同研究から得られる知見は、HFpEFに関連する遺伝子および細胞バイオマーカーに関する有益な洞察をもたらし、さらに、アジアの心血管疾患患者に対する治療目標を定めるための新しい診断ツールの開発につながるでしょう」

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る