タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)は6月8日、同庁の遺伝子工学バイオテクノロジーセンター(BIOTEC-NSTDA)が開発した、スリランカ・キャッサバモザイクウイルス(SLCMV)の新しい検出技術が、すでに国内で利用されており、ウイルス感染対策に貢献していることを発表した。
タイは世界最大のキャッサバ製品の輸出国であり、輸出額は1000億バーツ(約3800億円)と推定される。しかし近年、同国ではSLCMVの蔓延が確認されており、キャッサバの生産に深刻な損失をもたらしている。病気の監視と管理が重要視され、現在その対策としてウイルスフリーの苗木の利用が進められている。
BIOTEC-NSTDAは今回、酵素結合免疫吸着法(ELISA)によるSLCMVの検出方法を開発し、国内にELISAを実施する5つの研究室を設立した。そのうちの1つであるFDグリーン(FD Green)タイ支社は、タイ味の素社の子会社であり、二重抗体サンドイッチEISA(DAS-ELISA)法によるSLCMV検査を行うラボを2021年に設立した。このラボでは、昨年3500以上のサンプルを検査し、同社の農場で生産したウイルスフリーの挿し木や苗を生産者に配布するなどの活動を行っている。
(提供:いずれもNSTDA)
さらに最近、BIOTEC-NSTDAのモノクローナル抗体生産・応用研究チームは、SLCMV検出用のストリップテストを開発した。この検査は、訓練を受けた専門家や科学的装置を必要とせず、現場で使用でき、15分で結果が得られ、精度は95%、特異度は100%、感度は89%と、非常に便利なものとなっている。このような病気の診断方法の開発以外にも、BIOTEC-NSTDAではキャッサバ生産業界をサポートするための様々な技術開発を進めているという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部