シンガポールと米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究技術アライアンス(SMART: Singapore-MIT Alliance for Research and Technology) は6月20日、同機関の研究者が従来の方法では数日かかっていた培養細胞における微生物汚染検出検査を、数分に短縮する新たな検出方法を開発したことを発表した。研究成果は学術誌 Cytotherapy に掲載された。
細胞治療は近年、さまざまな病気やけがに対する重要な治療法の選択肢となっている。健康なヒト細胞を患者に移植し、損傷した細胞を治癒または置換することで、がん、自己免疫疾患、脊髄損傷、神経疾患などを効果的に治療できる可能性も高まっている。これらの治療に使用するヒト細胞治療製品(CTP) の培養における微生物汚染の検出検査は、安全性、無菌性、品質を保証するために不可欠なものとなっている。しかし、従来型の方法は、最終製品検査の形で検査が行われる上、通常は数日かかっていた。
今回、SMARTの研究者が開発した機械学習を利用するプロセス分析技術では、培養液における微生物汚染を数分以内に検知することに成功した。この方法は、無菌の細胞培養液サンプル、細菌を混ぜた細胞培養液サンプルの紫外線ー可視光分析による吸収スペクトルを利用しており、無菌サンプルと細菌を混ぜたサンプルを正確に予測することができる。
このモデルを使うことで、「細胞培養のプロセス中に微生物汚染をモニタリングすることができます。それにより、より少ない人員で迅速に無菌性テストを実施できるため、安全性と無菌性が十分に評価されたCTPを患者に提供することが可能となります」
SMARTの学際的研究グループである、個別化医薬品製造のための重要な分析手法グループ(CAMP) の主任研究員で本研究の筆頭著者であるシュルティ・パンディ・チェルヴァム(Shruthi Pandi Chelvam) 氏はこのように述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部