シンガポール国立大学(NUS)は6月13日、同学の研究チームとNUSがん研究所(NCIS)の医師が共同で、がん治療薬の適切な投与量を特定する人工知能(AI)ツール「CURATE.AI」を用いたパイロット臨床試験を行い、患者ごとに最適な投薬量を決定できたことを報告した。
CURATE.AIは、同学のデザイン工学部(CDE)生物医学工学科を率いるディーン・ホー(Dean Ho)教授らにより開発された最適化プラットフォームだ。薬剤の種類や投与量、がんのバイオマーカーなどの患者の臨床データを活用し、個人に合わせたデジタルプロファイルを生成して、化学療法の過程で最適な投薬量をカスタマイズする。医師の負担を増やすことなく、治療期間中に投薬量を調整することができるという。
今回の試験は、2020年8月〜2022年4月の間、国内で進行性の固形がん(主に転移性大腸がん)と診断された10人の患者を対象に行われた。CURATE.AIが推奨した投薬量の97%を医師が受け入れ、一部の患者では、投薬量を約20%削減することができた。
ホー教授は「治療サイクルのさまざまな段階で、患者ごとに常にカスタマイズされた最適な用量を医師が迅速に特定できるようにしたいです。これは、既存の化学療法では難しかったことであり、少ない投薬量で最適な効果を患者が得られる可能性があります」と語った。
NUSの研究チームは、プラットフォームの性能をさらに検証するため大規模ランダム化試験に向けた準備を行っている。さらに、多発性骨髄腫などの他のがんや、高血圧などの疾患と診断された患者を対象とした臨床試験も実施する予定だ。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部