フィリピン原子力研究所(PNRI)は、原子力事故が発生した際の安全確保や放射線安全基準の策定を進める上で中心的な役割を果たす放射線研究センター(RRC)を開設したと発表した。国営フィリピン通信社(PNA)が6月29日に伝えた。
RRCはケソン市内の複合施設にあり、フィリピン保健研究開発評議会から7600万ペソ(約1億8000円)の資金提供を受けている。
同国のフォルチュナト・デラペニャ(Fortunato de la Peña)科学技術相は、「フィリピンは、がん細胞や正常細胞における放射線の影響に関する前臨床研究が遅れています。RRCは学際的な研究を行う機能を持っており、基礎研究から臨床現場に役立つ優れた成果を上げてくれると確信しています」とし、「RRCは国内外の学術機関や民間組織、病院などに研究協力の機会を与えるだけでなく、放射線被ばくの影響やがん研究に関わる世界中の研究者から注目される存在になるだろう」と述べた。
フィリピン科学技術省(DOST)は、放射線腫瘍学や医薬品開発、線量測定分野の前臨床研究と関連した協力において、RRCが最前線の活動を行うことを目指す。
(提供:PNA)
同相は、前臨床試験での放射線の影響を調査することで、フィリピンのがん患者に合った治療を開発できるようになると指摘。また、RRCでプロジェクトリーダーを務めるチト・フェリシアーノ(Chitho Feliciano)氏は、「RRCの研究者は現在、基礎研究開発に従事しています。国の放射線防護と原子力規制は、放射線生物学で得られた研究成果に基づいて策定されています」と話した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部