シンガポール国立大学(NUS)は7月4日、水素燃料を商業化するための技術創出を目指し、水素イノベーションセンター(CHI)を新たに設立した、と発表した。
水素イノベーションセンター(CHI)を率いるリウ・ビン(Liu Bin)教授(右から2人目)ら
環境に害となる石炭燃料に対して、水素を使った燃料はエネルギー効果が高く、二酸化炭素(CO2)排出量も少ないという長所を持つ。しかし、水素燃料の商業利用においては高いコストが問題となっている。7月1日に運営を開始したCHIは、水素燃料をグリーンエネルギーとして商用化するための革新的な技術を開発し、シンガポールを「水素経済」におけるゲームチェンジャーとすることを目指している。
水素イノベーションセンター(CHI)の説明
CHIは、水素燃料の商用化技術を目指す研究施設としては東南アジアで初。シンガポールの政府系ファンドであるテマセクホールディングスから1500万シンガポールドル(約14.8億円)の寄付を受け、NUSからの追加予算と合わせて、2500万シンガポールドル(約24.7億円)の投資を受けている。
センターの研究者ら
(提供:いずれもNUS)
CHIは、NUSの学内における理学、工学、社会科学、人文科学などの幅広い専門知識を活用し、水素経済を実現するための課題解決に向けて総合的に取り組む予定。運営開始にあたり、まず水素キャリア(水素の貯蔵や搬送)などをテーマとした9つの革新的なプロジェクトを進め、各プロジェクトに資金提供を行う。
CHIの役割について、NUSグリーンエネルギープログラムを設立したリウ・ビン(Liu Bin)教授は「新しいセンターを通じてシンガポール国内で水素関連の研究開発を進め、燃料として水素のコストを削減できるよう課題の解決を図ります。水素関連に従事する専門家の層を厚くするため、学界や産業界に対して人材育成の機会を提供し、シンガポールの将来の水素経済に備えるため、労働力の質の向上を進めます」と今後のプランを述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部