8月17日にインドネシアがオランダから独立して77年を迎えるのを前に、同国 のジョコ・ウィドド大統領は16日、2023年の国家予算案 (Anggaran Pendapatan dan Belanja Negara:APBN) とその法案 (Rancangan Undang-undang;RUU) に関するスピーチを行い、2023年度は、以下の5つの主要課題が焦点になると述べた。本主要課題は、インドネシア国家中期開発計画(RPJMN)2020-2024(2020年大統領令第18号)に沿った内容である。
JSTアジア・太平洋総合研究センター調査役 東美貴子
今後、ボルネオ島への新首都移転計画を含むエネルギー、インフラストラクチャー、および情報技術分野でのインフラ設備投資が注目される。川下産業やグリーンエコノミー開発について、インドネシアは世界のリチウム電池サプライチェーンの主要生産国であり世界の電気自動車メーカーがインドネシアへの投資を活発化しており、川下産業の活性化も推奨するとある。また、太陽熱、地熱、風力、海流、バイオマスエネルギーなどのクリーンエネルギー発電の推進として、炭素吸収源となる熱帯林やマングローブ林の維持・再生と共に北カリマンタンのグリーン工業地域を世界最大規模の「グリーン」団地にするとした。
さらに、科学技術人材も含めた人材の質向上に関して、教育予算として608.3兆ルピアが計上されている点が注目される。現在、インドネシアは人口ボーナス期にあり、建国5原則「パンチャシラ」の価値観を踏まえた、文化的アイデンティティを維持した生産的、革新的で世界的に競争力のある人材の育成に重点が置かれている。インドネシア国家中期開発計画(RPJMN)2020-2024では、優秀で競争力のある人材に支えられた各地域の競争力に基づく強固な経済構造を重視し、様々な分野での開発を加速することにより、独立、先進、公正、繁栄したインドネシア社会を創造するといったビジョンを掲げており、国家イノベーション研究庁(BRIN)の「2022-2024戦略計画」では科学技術の研究・開発・利用による知見、ブレークスルー、イノベーションを実現し、生産性や競争力の向上、環境の質や災害レジリエンスの向上、気候変動に貢献すると共に優秀で競争力のある人材と研究イノベーション基盤の構築等をミッションとして掲げ、オープンプラットフォームの開設や国際人材の流動化に着目している。
なお、予算規模は2022年度予算を約2%下回る3,041兆7,000億ルピア(約27兆3,700億円)で、うち2,230 兆ルピアは中央政府 支出、811兆7,000億ルピアは地方移転となる。