2022年09月
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人の汗をウェアラブルデバイスの充電に利用―伸縮自在の布状、紙製の電池開発 シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、同学の複数の研究者チームが、ウェアラブルデバイスの電源として3つの超薄型電池を開発していることを紹介した。8月12日付。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックなどに起因する消費者の健康意識の高まりを受け、ウェアラブル機器の需要は近年、急速に高まっている。しかし、それらに搭載されている電池は長持ちせず、その大きさがデバイスの薄型化の限界にもつながっている。さらに電池を廃棄する際には環境問題が生じる。これらの課題を解決するために、NTUの複数の研究チームは、以下の3つのアプローチで、外出先でも充電でき、より薄く、より環境に優しい電池の開発を進めている。

1つ目は、材料科学工学部長であるリー・プーイ・シー(Lee Pooi See)教授が率いるチームが開発した薄い布状の電池で、運動している人の汗をデバイスの充電に利用する。サイクリストが装着した4個の電池は、市販のウェアラブルセンサーがBluetoothでデータを送信するのに十分な電力を発電することができた。研究成果は、科学誌 Science Advances に掲載された。

NTUの リー・プーイ・シー(Lee Pooi See)教授(中央)ら

2つ目は、リー教授が率いる別の研究チームが開発した伸縮自在の布状の電池で、押したり、揉んだり、伸ばしたり、こすり合わせることで、電気を発生させる。運動や歩行などの体の動きで充電が可能となる。研究者らは3cm×4cmの電池を叩くと、100個のLEDを点灯させるのに十分な電力が得られることを発見した。研究成果は、2022年4月に科学誌 Advanced Materials に掲載された。上記2つには、重金属や毒性の強い化学物質は一切含まれておらず、動作装置にも、環境に優しい材料が使用されている。

伸縮自在の布状の電池

3つ目は、理・数理科学研究科のファン・ホンジン(Fan Hongjin)教授が率いる研究チームが開発した 紙でできた薄さ0.4mmの充電式電池で、曲げたり、ねじったり、切ったりしても電力を供給し続けることができるものとなっている。4cm×4cmの電池を用いて小型扇風機に45分間電力を供給する実験に成功しており、この電池は生分解性であるため、従来の電池よりも環境に優しいことも期待されている。研究成果は、科学誌 Advanced Science に掲載された。

紙でできた充電式電池

ファン・ホンジン(Fan Hongjin)教授(左から3人目)ら
(提供:いずれもNTU)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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