2022年09月
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交尾後のメスによる捕食を防御―オスグモは精子の移動量を最大化 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)は、同大学の研究者らは、交尾後に捕食される危険性がある場合、オオジョロウグモのオスは、交尾の成功率を最大化するために対となる2つの性器のうち、より多くの精子を持つものを最初の交尾に使用していることを明らかにしたと発表した。8月16日付け。この研究成果は科学誌 Communications Biology に掲載された。

交尾するクモ (Photo credit: Li Daiqin 提供:NUS)

オオジョロウグモのオスとメスはそれぞれ2つの生殖器を持ち、一度の接触で2回の交尾のチャンスがある。また、クモは交尾後にメスがオスを捕食することで知られる生物でもある。NUS生物科学部のリー・ダイキン(Li Daiqin)准教授が率いる研究チームは、捕食される可能性があるオスグモは2つの生殖器の内より多くの精子を持つ性器を最初の交尾で使用することを発見した。

リー准教授らはメスによる捕食に対抗するためのオスの交尾戦略について2つの仮説を立てた。1つ目の仮説は「最初の交尾でより多くの精子を持つ性器を選択する」というもの、2つ目の仮説は「精子の移動速度を高速化する」というものだ。研究チームが捕食の頻度やメスとオスの体格差が異なるシンガポールの5種のクモを対象に比較実験を行った結果、捕食頻度が高い種では、最初の交尾の際にオスはより多くの精子を持つ性器を選択することが分かった。

また、捕食頻度が高いかメスの体格が明らかに大きい種の場合、オスはより多くの精子を移動させていることも発見した。これらの結果は2つの仮説を支持するものとなった。

リー准教授は「今回の研究は交尾後のメスによるオスの捕食行動と交尾行動の関連性を明らかにするもので、動物の生物学的な多様性が性的対立によって重要な影響を受けていることが示唆されます」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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