タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)は、同国初のユネスコ世界ジオパークであるサトゥン・ジオパークの自然・文化遺産を保全するため、大規模な調査を行った。その情報をデジタルプラットフォームに保存し、活用する取り組みを行っていることを明らかにした。8月15日付け。
タイ南部に位置するサトゥン・ジオパークでは、5億4500万年前~2億4500万年前までの古生代の海の化石が発見されている。さらに美しいビーチ、石灰岩の山脈、洞窟、島々の集まりで知られ、豊かな文化と地域の知恵をもつ先住民の故郷でもあることから、2018年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界ジオパークに登録された。
この地の自然・文化遺産を保全するため、NSTDAはサトゥン・ジオパークの生物多様性、地域の知恵、文化遺産を明らかにし、保全、教育、観光の促進に活用する複数のプロジェクトを立ち上げている。その1つが生物と文化遺産の調査とデジタルプラットフォームへの保存である。これまでに、タイのソンクラー大学、ソンクラー・ラチャパット大学、サトゥン・コミュニティ・カレッジらの研究チームにより、ル・ステゴドン洞窟などの洞窟や海岸線、島々における微生物などの生物、さらには文化遺産についての大規模な調査が実施され、ウミヒルモ属の海草(Halophila beccarii)、オオカナダモ(Calidris tenuirostris)、カワセミ(Pelargopsis amauroptera)など、脆弱で絶滅の危機にあるいくつかの種を発見するに至った。
(提供:いずれもNSTDA)
タイ国立電子コンピューター技術研究センター(NECTEC-NSTDA)では、文化遺産の収集と保存を支援するためにデジタルプラットフォームナバヌラクを開発しており、これらの情報も保存・公開されている。
NECTEC人工知能(AI)研究グループのディレクターであるテプチャイ・スプニティ(Thepchai Supnithi)博士は「ナバヌラクは文化と生物多様性に関する情報の管理と普及のためのプラットフォームです」と説明している。ナバヌラクは情報や写真、ビデオ、オーディオ録音などのマルチメディアをデータベースにアップロードすることで、ユーザーが自然または文化遺産をアーカイブできるものとなっている。
この取り組みは、タイのBCGエノコミー(バイオ・循環型・グリーンを重視する新経済モデル)の一環。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部