フィリピン科学技術省(DOST)は、同国の先端科学技術研究所(DOST-ASTI)の研究者らが、新興宇宙技術産業育成のための長期目標の一環として、同国の最新宇宙施設であるイロイロ地上受信局(GRS)にて超小型衛星ディワタ(Diwata)2との交信に成功したと発表した。8月25日付け。
DOST-ASTI研究チームは、7月27日から8月4日までイロイロ州デュマンガスにあるイロイロGRSを訪れ、テストや確認、初期運転を行った。イロイロGRSには3.5メートルの地球観測衛星追跡アンテナが装備されている。アンテナは2019年に設置され、フィリピン地球情報資源観測(PEDRO)センターの研究者がテスト運転を開始したが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による行動制限のため遅延していた。
この衛星追跡アンテナ建設は、DOST-ASTIと北海道大学の共同研究による「異常気象の監視と情報提供のための稲光・雷雨理解(ULAT)プロジェクト」によって実現した。国際協力機構(JICA)と科学技術振興機構(JST)による政府開発援助(ODA)の一環として実施されたものでもある。
ULATプロジェクトは、降雨と雷の発生状況や関連性を研究することによってフィリピンの気象パターンを理解することを目的とし、短期的な気象予測の改善が期待される。気象衛星を利用して雷雲の3Dモデルを作り、異常気象の観測を強化することも計画されている。これにより、脆弱な地域社会の安全を守るための気象予報を改善することができる。
(提供:いずれもDOST)
PEDROセンターの上級科学研究専門家であるハロルド・ブライアン・ペイラー(Harold Bryan Paler)氏は、「私たちはデュマンガス首長ブレイデン・ジョン・バイロン(Braeden John Biron)氏と、イロイロGRSを地域のためにどのように活用できるか話し合っています。現在、衛星画像サービスを地域社会に提供し、学術機関とその関連政府機関にリモートセンシングアプリケーションについて研修を行うことを検討しています。またDOST-ASTIによるワイヤレス技術やその他の情報通信技術を提供することも可能です」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部