シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、同大学の生物科学部マレク・ムトウィル(Marek Mutwil)准教授率いる研究者らが、植物器官の形成と機能にとって重要な役割を果たす可能性のある遺伝子を明らかにしたと発表した。9月19日付け。研究成果は、科学誌 Nature Plants に掲載された。
(提供:NTU)
陸生植物は、乾燥状態や紫外線といった陸上でのストレスに耐えることを可能にするいくつかの特殊な器官と生殖細胞を発達させてきた。しかしこれらの器官や生殖細胞の形成を制御する遺伝子と、それらの発現パターンについてはよくわかっていない。今回の研究では、植物器官と生殖細胞の進化に関与する可能性のある遺伝子を明らかにした。
植物器官の形成と機能および植物の有性生殖にとって重要である可能性のある遺伝子を特定するために、研究グループは、10種の陸上植物の数千の遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、植物器官の機能にとって重要であると考えられる、器官特異的に発現する数百の遺伝子を同定した。これらの遺伝子群は、さまざまな種の植物で同様に発現していた。加えて、雄の器官と細胞型の遺伝子発現が雌の器官と細胞型よりも、植物全体でよく保存されていることを発見した。
この結果は、陸生植物が新しい遺伝子を進化させる代わりに、既存の遺伝子を再利用して新しい器官を進化させる傾向があることを示唆している。「私たちの研究は、植物界における幅広い分類群の遺伝子発現を大規模に調査した最初の研究です。どの遺伝子が人類にとって有益な特性に関連するかを明らかにするだけでなく、植物がどのように進化したのかを理解するための新たな手がかりを提供します」と、ムトウィル准教授は語る。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部