シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、同学の研究者らが柔らかく、かつ頑丈で自己修復する素材を開発し、それを用いたソフトロボットを作ることに成功したことを発表した。10月10日付け。本成果は科学誌 Advanced Functional Materials に掲載された。
(提供:NTU)
2-ウレイド-4-ピリミジノンベースカルボキシル化ポリウレタン(UPy-CPU)と呼ばれるこの素材は、医療機器から建築資材まで幅広く活用されている柔軟な材料であるポリウレタンの化学構造を改変して作られている。UPy-CPUのひび割れに、クロロホルム、アセトン、イソプロピルアルコールなどの溶媒を塗布すると、室温で12時間以内に自然治癒することが確認されている。
柔軟な素材で作られたソフトロボットは、手術支援や医療リハビリなど、安全性が必要な場面での活用に大きな期待が寄せられているが、その柔らかさゆえにダメージを受けやすく、故障しやすいという欠点があった。UPy-CPUで作られて這って動くソフトロボットは、体重の4000倍の荷重で押しつぶされても這い続け、この材料の強靭さを証明した。
本研究を主導したNTU大学院大学長のリー・プーイ・シー(Lee Pooi See)教授は、「柔らかく、かつ頑丈な自己修復ロボットは、将来、倒壊した建物の瓦礫に閉じ込められた人を探す救助活動など、人間が立ち入ることができない過酷な環境を移動するのに使われるかもしれません」と述べ、研究の有用性をアピールした。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部