シンガポール国立大学(NUS)は10月18日、同校とシンガポール国立研究財団(NRF)が、シンクロトロンを用いた研究を推進するためのナショナル・シンクロトロン・プログラム(NSP)を立ち上げたことを発表した。このプログラムの一環で、NUSとオーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)は10月17日、シンガポールの研究者がオーストラリアのシンクロトロン施設へ優先アクセスできる協定に署名した。
NUSが主催するNSPには、1600万シンガポール・ドル(約16億7千万円)の予算が付き、国内の全ての研究機関や産業にシンクロトロン関連研究の活発な連携環境を提供する。これにより、シンガポールにおけるシンクロトロン分野の取り組みを国際的に示すための人材育成や独自技術の開発、新たな知見の獲得を図る。
シンガポール・シンクロトロン光源施設(SSLS)の様子
(提供:NUS)
NSPは、シンガポール・シンクロトロン光源施設(SSLS)での国内の研究リソース調整と同時に、国際シンクロトロン・アクセス(ISA)イニシアチブを通じて、海外施設とのリソース調整も行う。NUSはISAイニシアチブの下で、ANSTOとの5年間の協定に署名した。この協定の発足式は、第7回シンガポール・オーストラリア首脳会議に参加するためにシンガポールのリー・シェンロン(Lee Hsien Loong)首相がオーストラリアを公式訪問した期間中に行われた。
NUSの副学長であるチェン・ツハン(Chen Tsuhan)教授は、今回の連携協定について、「シンクロトロンは、生命科学、材料科学、環境分析、マイクロ・ナノ加工など、多くの分野にとって極めて重要です。シンクロトロン研究の発展は、幅広い材料探索や科学実験を可能にし、重要な発見を導きます。NUSがNSPとISAイニシアチブを主催することを嬉しく思います。シンガポールの研究者は、これによって世界トップクラスの研究施設にアクセスできるようになります。そして、社会に利益をもたらす画期的なソリューションを得るためのイノベーションを加速させます」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部