2022年11月
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効率的に水素を生成へー新たな電気触媒メカニズムを発見 シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)は、同大学のシュエ・ジュン・ミン(Xue Jun Min)准教授率いる研究チームが、光が引き起こす水の電気分解の新しい電気触媒メカニズムを発見したと発表した。10月27日付け。エネルギー効率がより高い水素の生成方法の開発につながると期待される。研究成果は科学誌 Nature に掲載された。

シュエ・ジュン・ミン(Xue Jun Min)准教授(中央)ら研究チームのメンバー
(提供:NUS)

研究は、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)化学・エネルギー・環境のためのサステナビリティ研究所のシ・シボ(Xi Shibo)博士、A*STARハイパフォーマンスコンピューティング研究所のユ・ズィゲン(Yu Zhigen)博士、NUS CDE機械工学科ワング・ハオ(Wang Hao)博士らと共同で行われた。

ミン准教授は「電解触媒反応のための酸化還元の中心が、光に誘発されて金属と酸素の間で切り替わることを発見しました」と語った。これは新しくより効果的な水素の生成方法の創出につながる成果であり、環境に優しい水素という燃料資源を手の届きやすいものにする可能性を秘めている。

この発見には、偶然の産物でもある。2019年当時ミン教授の研究所の天井照明は通常24時間点灯していたが、ある夜停電により電気が消灯した。次の日に研究者らが戻ってくると、暗所で続けられていた水の電気分解実験におけるニッケル・オキシ水酸化物ベースの物質の作用が大幅に低下していたのだ。「誰も暗闇の中で実験を行ったことがないので、この作用の低下はそれまで誰も気が付いていませんでした。そのような物質は光に敏感ではなく、光がその性質に影響をあたえるはずはないというのが通説でした」と、ミン准教授は振り返る。研究チームは何度も実験を繰り返し行い、3年後に結果を論文として公開した。

チームは現在、水素を生成する産業プロセスを改善する新しい方法に取り組んでいる。水の分解プロセスに光を導入するために、水を含む細胞を透明にすることをミン准教授は提案し、「これにより電気分解プロセスが少ないエネルギーで済み、自然光を使用することではるかに容易になるはずです。より短い時間かつ少ないエネルギーで、さらに多くの水素を生成することが可能になります」と語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部