シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、タイの各都市の1,000人を対象に戸別訪問によるアンケート調査を実施した。その結果、どの国の回答者も半数以上が原子力開発に反対していることが判明した。10月31日付け発表。研究成果は科学誌 Energy Research & Social Science に掲載された。
(提供:NTU)
原子力は世界の主要な低炭素発電エネルギーの一つであり、世界の電力の約10%を生産している。NTUのWee Kim Wee School of Communication and Information のシャーリー・ホー(Shirley Ho)教授らは、東南アジアにおける国民の原子力エネルギー開発に対する意識調査を行った。
調査では参加者に対して、原子力エネルギーへの支持、原子力エネルギーに関する政府、大学の科学者、ビジネスリーダーなどへの信頼、原子力知識、一般ニュースや原子力関連情報への関心、原子力エネルギーのリスクと利点に対する考えなどの質問への回答を求めた。その結果、どの国でも回答者の半数以上が原子力開発に反対していた。
ホー教授は「この地域における原子力に対する否定的感情は、2011年の福島原子力発電所メルトダウンの余韻が残っている結果かもしれません」との見解を示した。そのうえで、今回の研究結果について、「原子力のような論争の的になる技術については、さまざまな関係機関や国家への信頼とリスク認識が、国民の科学的情報の解釈や判断の手掛かりとなっていることを示しています。これを理解することは政策立案者にとって有用です」と話した。
この記事はNTUのリサーチ&イノベーション誌 Pushing Frontiers の20号(2022年6月)に掲載された。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部