シンガポールにある米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究技術アライアンス(SMART: Singapore-MIT Alliance for Research and Technology)薬剤耐性(AMR)学術研究グループ(IRG)の研究者らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異型を検出する新しい定量RT-qPCR分析結果を開発し、排水中のウイルス検出において前進を遂げた。
これは、シンガポールの南洋理工大学(NTU)、シンガポール国立大学(NUS)、MIT、シンガポール環境生命科学工学センター(SCELSE)、イタリアのIstituto Zooprofilattico Sperimentale della Lombardia e dell'Emilia Romagna (IZSLER) の研究者との共同研究の成果だ。
これにより、下水道の監視でコミュニティや集団における変異の動態を正確に追跡し、特定のウイルス病原体の特性に応じて調整された適切な公衆衛生措置の実施を支援し、情報を提供することが可能となる。
排水モニタリングは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時に、ウイルスの発生を効果的かつ非侵襲的に追跡する方法として登場した。技術の進歩により、排水サンプル中の特定の懸念物質(VOC)の存在を特定するだけでなく、定量化することができるようになった。このように特定のVOCをカウントして評価する能力は、SMARTのオープンソースアッセイならではのもので、研究者は地域社会の変位傾向を正確に把握することが期待できる。
この分析結果によって、地域社会に流通するSARS-CoV-2のうち、どの程度の割合が特定の変異型に属しているのかを明らかにすることが可能となる。特に、SARS-CoV-2のVOCであるアルファ、デルタ、オミクロンとその分派は、パンデミックの様々な局面で出現し、それぞれ集団がより影響を受けやすい新たな感染症の波を引き起こしたからである。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部