2022年12月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2022年12月

大気中のブラックカーボンに関連して肺腺がんが増加 シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は、大気中のすすとして知られるブラックカーボンが1立方メートル当たり0.1マイクログラム増加すると、世界的に肺腺がんの罹患率が12%増加することを発見したと発表した。11月14日付け。香港中文大学との共同研究。

(提供:NTU)

発見が遅れることが多い肺がんは世界的に死亡原因の上位にランクされている。喫煙が原因として知られる肺がんもあるが、最も一般的な肺がんである肺腺がんの正確な原因は依然として不明であった。

NTUと香港中文大学の研究者らは、世界保健機関(WHO)のデータを用いて1990年から2012年までの肺がんの傾向について、米航空宇宙局(NASA)から提供されたデータを用いて大気中に含まれるブラックカーボンや硫酸塩を含む微粒子レベルについて分析を行った。その結果、大気中のブラックカーボンが1立方メートル当たり0.1マイクログラム増加すると、世界的に肺腺がんの罹患率が12%増加していることを明らかにした。

本研究を主導したNTUの上級副学長(健康・生命科学)兼リーコンチアン医科大学(LKCMedicine)学長のジョセフ・サン(Joseph Sung)教授は「我々は、肺腺がんの世界的な増加が大気汚染と関連している可能性が高いと判断しました」と指摘。また、本研究の筆頭著者であるNTUアジア環境学部とリーコンチアン医科大学のスティーブ・イム(Steve Yim)助教授は今回の研究結果について、「大気汚染物質、特にブラックカーボンの排出を削減する必要性と緊急性を示しています」と加えた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る