2022年12月
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食品中の残留農薬・病原菌除去へ食品用洗浄消毒剤を開発 タイ

タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)は、同庁所管の国立エネルギー技術センター (ENTEC)が天然成分から食品洗浄消毒剤「フーデケア(FOODe' care)」を開発したと発表した。11月23日付け。国内の食品安全と衛生習慣を推進することが目的。

新鮮な果物や野菜、肉などに含まれる病原菌や残留農薬は、人間の健康を脅かす。毎年、世界中で何百万人もの人々がコレラ菌やサルモネラ菌、大腸菌、リステリア菌などの病原菌によって食中毒に苦しんでいる。また、有機リン酸塩や有機塩素、カルバミン酸塩、ピレスロイド化合物などの農薬は、ヒトの神経に損傷を与え、酵素の生成や代謝を阻害し、病気や死に至らせることがある。生鮮食品を適切に洗浄することは、こうしたリスクを減らすために重要である。

ENTECの低炭素エネルギー研究グループのソムサック・スパシットモンコン(Somsak Supasitmongkol)博士らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの際に、研究チームは消毒剤の需要の高まりに応えるため消毒剤製造装置(ENcase)を開発した。ENcaseは、電気分解によって、前駆体である塩化ナトリウム(NaCl)を電解水に変換する。電解水には、消毒剤として機能する次亜塩素酸(HOCl)が含まれる。研究チームは、そこから食品用洗浄剤としての次亜塩素酸の応用研究を行い、病原菌や残留農薬を効率よく除去するFOODe' careを開発した。

(提供:いずれもNSTDA)

FOODe' careの特徴として、

  • ① 主成分は天然成分で、有害な化学物質やアルコールを含まない
  • ② 残留農薬の除去効果が高く、99.9%の病原菌を除去できる
  • ③ 味や栄養を損なうことなく洗浄ができる
  • ④ タイ食品医薬品局の規格を満たす
  • ⑤ 食品衛生のための次亜塩素酸の利用は、米国、日本、韓国で認可されている

--ことが挙げられる。

ENcaseは消毒剤製造装置であるが、FOODe' careは食品用洗浄剤なのですぐに使用できる。ソムサック博士は「タイ国内における消毒剤の市場規模は2025年までに2億3000万バーツに達すると予想されるため、新製品にも十分な成長のチャンスがあります」と予測する。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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