2022年12月
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合成カンナビノイドの摂取を検出する3つのバイオマーカー特定―乱用の可能性監視へ シンガポール

シンガポール国立大学(NUS)は、同学の研究チームが新しい合成カンナビノイドであるオキシジドの尿バイオマーカーを特定し、乱用の可能性を監視することに成功したことを発表した。11月29日付け。研究成果は科学誌 Clinical Chemistry に掲載された。

NUS薬学部のエリック・チャン教授(中央)ら
(提供:NUS)

新しい精神活性物質、特に合成カンナビノイドの乱用は、ここ10年間、公衆衛生に大きなリスクをもたらしてきた。各国政府は合成カンナビノイドの使用を法律で禁止しているが、違法製造業者は科学捜査による検出を回避するために、新しい合成カンナビノイドを製造している。その1つがオキシジドで、ユニークな分子構造を持ち、既存の法律では規制されていないため、乱用の可能性が指摘されている。合成カンナビノイドの摂取は、尿中のバイオマーカーを検出することで確認される場合が多いが、オキシジドについては代謝プロファイルがほとんど知られておらず、バイオマーカーも確立されていなかった。

NUS薬学部のエリック・チャン(Eric Chan) 教授が率いる研究チームは、シンガポール健康科学庁(HSA) の分析毒物研究所と共同で、4種類のオキシジド類似物質について主要代謝物の特定と尿中バイオマーカーの同定に取り組んだ。研究チームはそれぞれのオキシジドについて12〜16種類の主要代謝物を特定した。その中でオキシジド接種後の尿サンプルに多く含まれる3種類の特徴的なバイオマーカーを同定した。

チャン教授は「私たちの研究室では、カンナビノイドの不正使用を診断するための尿バイオマーカーを確立する研究を行っています。この研究は法医学や薬学といった学際的な研究が現実の問題を解決するために重要であることを証明するものです」と話している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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