シンガポール科学技術研究庁(A*STAR) の科学者らは、ジャガイモに含まれるデンプンの消化を遅らせて、体内でのブドウ糖への変換を制御する新たな食品加工技術を開発した。
ジャガイモは世界の多くの地域で主食として食べられており、エネルギーと必須栄養素を供給している。一方で、調理されたジャガイモに含まれるデンプンは急速に消化されてブドウ糖に変化し、血糖値を上昇させる。そのため、肥満や糖尿病のリスクを高めると言われている。
A*STARの研究者らは、最初に米国食品医薬品局(FDA) で安全性が確認されている食品用素材と一緒に生のジャガイモを30分ほどゆでるだけという簡単な方法で、デンプンの消化を遅らせる加工技術を開発した。この工程で、ジャガイモに含まれる水溶性繊維であるペクチンが反応し、デンプンとそれを分解する酵素の間にバリアのような働きを持つゲル状の多孔質層が形成される。酵素はこの多孔質層を通過してデンプンと反応することは可能だが、通常より速度が遅くなる。その結果、デンプンのブドウ糖への変換が遅くなり、血糖値の上昇を防ぐことができる。
処理後の食味も良好で、チキンカレー、フライドポテト、ローストポテト、ハッシュドポテトなどさまざまな料理にも使用可能だ。さらに、この技術で処理されたジャガイモの摂取は満腹感が得られ、ダイエットにも有効であると考えられる。
A*STARのシンガポール食品・バイオテクノロジー・イノベーション研究所(SIFBI) の主席研究員で食品炭水化物プログラムの責任者であるアミ・リン(Amy Lin) 博士は「デンプン質の食品を、より健康的で、おいしく、手頃な価格にすることが私たちの研究目標です」と今後の展望を語った。
2022年12月2日付け発表。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部