2023年01月
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アルツハイマー病関連の新たな細胞集団を発見―疾患性マクロファージ(DIM)と命名 シンガポール

シンガポール科学技術研究庁(A*STAR) のシンガポール免疫学ネットワーク(SIgN) が率いる国際研究チームは、これまでにアルツハイマー病モデルマウスで検出され、1つの細胞集団と考えられていた疾患関連ミクログリア(DAM)細胞集団の中に、加齢やアルツハイマー疾患で増加する異なる細胞集団を同定した。この集団は、疾患性マクロファージ(DIM)と命名された。研究成果は科学誌 Immunity に掲載された。

研究チームは細胞集団を特定するために、脳の恒常性、脳の発達、脳疾患に関して公表されている1細胞RNA-seq解析 のデータセットを収集した。1細胞RNA−seq解析は細胞ごとの転写産物の種類と量を網羅的に検出するため、細胞集団の分類にも使用できる。これらのデータと研究チームが持っていたデータを統合することで、発達から疾患までの単一細胞の全容をまとめ、脳のマクロファージに焦点を当てて分析したところ、DIM細胞集団の発見につながった。

DAM細胞集団は脳内のアミロイドβ除去や、組織修復など有益な機能を持ち、DIM細胞集団は炎症性プログラムを発現しており、有害な機能を持つことが示唆されている。マウスで発見されたこれらの細胞集団は、ヒトの脳にも存在することが証明されている。

本研究を主導したA*STARのSIgN上級主任研究員のフロラン・ギンホウ(Florent Ginhoux) 博士は「脳のマクロファージの不均一性に光を当て、加齢や神経変性において、炎症性の特徴を持つ細胞集団が蓄積することを明らかにしました。この細胞集団をターゲットにすることで、アルツハイマー病やその他の脳炎症性疾患に対する新たな治療機会を提供できるかもしれません」と話している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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