2023年01月
トップ  > ASEAN科学技術ニュース> 2023年01月

【AsianScientist】生物医学や水浄化への取り組みで貢献―シンガポール大統領科学技術賞に2氏

シンガポールの研究開発エコシステムへの並外れた貢献により、2名の研究者が2022年大統領科学技術賞(President's Science and Technology Awards:PSTA)を受賞した。

1987年のNational Science and Technology Awardsに取って代わったPSTAは、大統領科学技術賞、大統領科学賞、大統領技術賞の3つの賞から成る。これらの賞は、シンガポールに科学的、技術的、経済的に重要な利益をもたらしたシンガポールの研究科学者やエンジニアに与えられる最高の栄誉である。

まず、大統領科学技術賞は、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR) の分子細胞生物学研究所(IMCB)の所長であるホン・ワンジン(Hong Wanjin)教授に授与された。ホン氏は、シンガポールの生物医学研究セクターを推進する上で重要な役割を果たし、同国の生物医学エコシステム内でパートナーシップを促進することに尽力したことが評価された。

ホン氏は1989年にシンガポールに移り、A*STARのIMCBに参加した。タンパク質輸送の研究で成功を収め、最終的には2011年に研究庁を率いるまで昇進した。同氏はこの10 年間、教育、公共及び臨床部門間のパートナーシップを促進してきた。彼の努力により、ベンチからベッドサイド(基礎研究から臨床での治療)への研究のより効率的な転換が実現した。彼のリーダーシップの下、IMCBはこの7年間で15社のスピンオフ企業を見てきた。それら企業のそれぞれがシンガポールの患者に利益をもたらす態勢を整えている。

もう1人、大統領技術賞は、シンガポールの南洋理工大学(NTU)の土木環境工学部 (CEE)の学部長で、新興企業 H2MO TechnologyとAromatec の創設者であるワン・ロン(Wang Rong)教授に授与された。

ワン氏は、膜の科学技術分野への多大な貢献が認められた。彼女はそのキャリアの中で、淡水化、水の再利用、廃水処理、液体精製、ガス分離などの用途に使用できる新しい膜を開発してきた。彼女は築いたパートナーシップを活用して、政府機関や業界パートナーと協力することで、その研究を研究室から現場にもたらしている。ワン氏の研究は、シンガポールの NEWater の取り組みの一環として大いに注目を集めた。

シンガポールの水の回復力と持続可能性の目標の一部であるNEWaterは、非常にクリーンで安全に飲める処理及び浄化された再生水のことである。再生水は、高度な膜技術と紫外線消毒を使用して浄化される。ワン氏の研究は、バイオプログラム可能な中空繊維逆浸透膜の開発につながり、水処理プロセスにおける大幅なエネルギーの節約になった。このプロセスは、他の浄水プロセスにも適用できる。

ワン氏はこの分野のリーダーであり、現在、世界の膜コミュニティの旗艦誌である Journal of Membrane Science の編集長のほか、Aseanian Membrane Society の会長も務めている。

受賞者は、2022年12月9日にシンガポール大統領の官邸兼オフィスであるIstanaで開催された式典で表彰された。式では、シンガポール国立科学アカデミーが主催し、A*STAR が支援するYoung Scientist Awards (YSA)の受賞者も表彰された。

上へ戻る