シンガポール国立大学(NUS)は、同大学の研究者がインドネシアのスマトラ島南部の泥炭湿地で新種の樹木を発見し、ラテン語とインドネシア語で「泥炭地の花冠」を意味するロフォペタルム・タナガンブト( Lophopetalum tanahgambut )と命名したことを伝えた。研究成果は科学誌 Phytotaxa に掲載された。
新種の樹木と、NUS環境研究所の研究助手である Agusti Randi(アグスティ・ランディ)氏(© Agusti Randi)
(提供:NUS)
泥炭湿地は、枯死した植物が堆積し膨大な量の炭素を蓄えている強力なスポンジのような役割を持っているが、インドネシアではパーム油や紙パルプ原料を生産するためのプランテーション開発でその面積が大きく減少している。本研究は、泥炭の分解におけるメカニズムと熱帯泥炭システムにおける森林やプランテーションの緑化についての理解を目的とした、NUS環境研究所(NERI) の熱帯泥炭地総合研究プログラム(INTPREP) の一環として進められた。
NERIの研究者らは、スマトラ島南部の泥炭湿地で発見した高さ40メートルの樹木について1年以上にわたり、成長の観察、果実や芽のサンプル採取といった研究を続けた。英国のキュー王立植物園の専門家と協力し、この種についての研究成果をまとめ、2022年11月17日に科学誌 Phytotaxa に新種として発表した。新種の樹木であるロフォペタルム・タナガンブトは、この研究プログラムで発見された2種目の泥炭木となる。今回の発見により、東南アジアの泥炭湿地林に生息する約350種の樹木リストに新たな一行が付け加えられることとなる。
INTPREPの共同リーダーであるラヒル・ウィジェダサ(Lahiru Wijedasa) 博士は「泥炭湿地を回復させるためには、まずそこにある植物のことを知る必要があります」と植物研究の意義を語った。
2022年12月13日付け発表
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部