2023年01月
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がん治療向け抗体薬物複合体の臨床試験、米FDAが承認―シンガポール製としては初

シンガポール科学技術研究庁(A*STAR) は1月6日、国内複数の研究機関により開発された抗体薬物複合体(ADC)EBC-129の臨床試験実施が、シンガポール製として初めて米国食品医薬局(FDA)により承認されたことを発表した。

ADCは特定の細胞の特定の標的に結合するモノクローナル抗体と薬剤を結合させたものだ。標的となる細胞に抗体が結合して薬剤を送り込むため、従来の化学療法に比べて全身への副作用が少ないとされている。今回、固形腫瘍患者を対象とした臨床試験が承認されたEBC-129は、がん細胞で多く発現しているタンパク質CEACAM5およびCEACAM6を標的とする抗体が使用されている。そのため、正常な細胞には影響を及ぼさず、がん細胞を特異的に死滅させる効果が期待されている。

EBC-129の開発は、A*STARのバイオプロセシング技術研究所(BTI) とシンガポール国立がんセンター(NCCS) がEBC-129の基となる抗体とその標的を特定したことから始まった。その後、BTIとA*STARが運営する実験的薬剤開発センター(EDDC) の共同開発プログラムを通じて、抗体の特性評価と作用機序の解明が進められ、適正製造規範(GMP) に基づきADCの全臨床開発が進められた。EDDCは臨床試験をデザインし、試験のセットアップと運営を担当。BTIとEDDCはA*STARの分子細胞生物学研究所(IMCB)と協力し、患者選定に必要な免疫組織化学アッセイの開発も行った。

BTIのエグゼクティブディレクターであるコー・ブン・トン(Koh Boon Tong)博士は「EBC-129の臨床試験開始をFDAに承認されたことは、シンガポールの医薬品開発エコシステムの成熟度を証明し、研究や創薬の効果を高め、患者さんの治療につながるものだ」とプロジェクトの意義を語った。EDDCのCEOであるダミアン・オコネル(Damian O'Connell)教授は「シンガポールの国家的な創薬・開発プラットフォームとして、臨床試験を開始する治療薬開発において重要な役割を果たすことができ、うれしく思う」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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