シンガポール国立大学(NUS) は1月17日、同大学の研究チームが、仮想現実(VR)においてユーザーの触覚を大幅に強化する新型グローブを開発したことを発表した。
HaptGloveを手にするリム・チュエ・テック(Lim Chwee Teck)教授(中央)ら
既存の触覚グローブは振動モーターや空気圧アクチュエーターを使用しており、触覚の再現性や、グローブのサイズや操作性に課題があった。研究チームが開発したHaptGloveはワイヤレスで軽量であり、ユーザーにVR内の物質に触った皮膚感覚と動作感覚の両方を提供する。
HaptGloveは軽量な空気圧制御と研究チームが開発したマイクロ流体センシング技術を組み込むことで、サイズと重量を大幅に削減することに成功した。各指に1つずつ搭載された触覚フィードバックモジュールはワイヤレスで制御され、VRオブジェクトの形状、サイズ、硬さを感知し、マイクロ流体空気圧の圧子により、ユーザーの指先に圧力を与える。視覚と触覚の遅延は20ミリ秒未満に抑えられているためリアルタイムなユーザー体験が可能だ。20人のユーザーによるテストでは、硬さの異なる4つのVRオブジェクトの仕分け作業を90%以上の精度で行うことができた。また、振動モーターによるデバイスと比較して、HaptGloveが臨場感を高め、VR体験を向上させたとの評価も得ている。
(提供:いずれもNUS)
シンガポールの医療技術研究所(iHealthtech) 所長で研究チームのリーダーを務めるリム・チュエ・テック(Lim Chwee Teck)教授は「HaptGloveにより、ユーザーはより自然でリアルな仮想世界を体験できる。VRでレクリエーションや競技を行う際に邪魔にもならないだろう」と話す。
この発明により、研究チームはシンガポール技術者協会が授与するIES Prestigious Engineering Achievement Awards 2022を受賞した。また、特許を申請し、NUSのスピンオフ企業マイクロチューブ・テクノロジーズ(Microtube Technologies)社を通じて、2年以内に製品の販売を目指している。価格は5000~20000シンガポールドル程度とし、現在市販されている触覚グローブの半額程度を目標としている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部