2023年02月
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イガイの殻から炭酸カルシウムを精製する技術を開発 タイ

タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)は1月16日、タイ国立ナノテクノロジー研究センター(NANOTEC)の研究者が不用となった貝殻から薬用化粧品の原材料となるバイオ炭酸カルシウムを精製する技術を開発したと発表した。開発された技術は、低エネルギーで環境に配慮した方法が採られている。

不用となった貝殻は毎年、食品産業や宝飾品産業から大量に発生する。貝殻の95%は炭酸カルシウムが95%でできており、その産業用途での利用が注目されている。

NANOTECの研究者であるチュティパーン・ラートヴァチラパイブーン(Chutiparn Lertvachirapaiboon)博士は、今回の技術革新について「イガイの殻の内側にある真珠層の光学特性を調べた私の博士論文がベースになっている」と説明する。この博士論文を基にイガイの殻から精製されたバイオ炭酸カルシウムは、アラゴナイト型の結晶構造を持ち、石灰岩から得られる炭酸カルシウムとよく似た化学的特性を有する。

(提供:いずれもNSTDA)

チュティパーン博士は、タイ国家研究評議会(NRCT)からの資金を活用して、精製プロセスを改善してエネルギー効率を高め、産業用途のバイオ炭酸カルシウムを精製した。バイオ炭酸カルシウムは、環境に優しい物質として、スクラブ洗顔料で使用されるマイクロプラスチックの代替になり得ると期待される。また、歯磨き粉の有効成分であるヒドロキシアパタイトを生産するための原料としても最適である。他にも研究チームは、プラスチックや製紙などの分野で利用できるアラゴナイト型炭酸カルシウムを精製するプロセスを開発した。

ムール貝の殻から作られるバイオ炭酸カルシウムは、貝殻の廃棄物をアップサイクルしてさまざまな産業に貢献する画期的なもので、今回発表された技術は、環境に悪影響を与えることなく産業競争力を強化することが可能となる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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