2023年02月
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治癒困難な傷口の修復促進に「アグリン」が有効 シンガポール

シンガポール科学技術研究庁 (A*STAR)は1月17日、A*STARの分子細胞生物学研究所(IMCB)とシンガポール国立大学(NUS)の研究者らが、皮膚の再生時におけるアグリンの機能を解明するとともに、合成アグリン断片(sAgrin)がマウスの傷口修復を促進する効果を示したことを発表した。研究成果は学術誌 Nature Communications に掲載された。

アグリンは大きくて硬いタンパク質で、神経筋接合部の足場として重要であり、皮膚細胞を包み込むことで、皮膚損傷後の物理的ストレスから保護する機能を持つことが知られている。一方でアグリンが皮膚の細胞外マトリックス(ECM)の他の成分とどのように相互作用しているかについては、ほとんど分かっていなかった。

IMCBの主任研究員であるワンジン・ホン(Wanjin Hong)博士の研究グループは、NUSのチューテック・リム(Chwee-Teck Lim)教授の研究室と共同で皮膚の再生時におけるアグリンの機能解析を行った。研究グループは、モデルマウスを用いた実験で、アグリンは皮膚の再生時に増加することが分かった。さらに、遺伝子操作により、アグリンの生成を抑制したところ、皮膚の再生が遅れることも明らかにした。

また、アグリンと他のECMタンパク質の相互作用を調べたところ、アグリンが皮膚の再形成に関与するマトリックスメタロプロテアーゼ12(MMP12)という酵素の生成を促進することにより、治癒を早めていることも発見した。さらに、可溶性のsAgrinを合成し、ゲルに混ぜてマウスの傷口に塗ると、皮膚の修復が促進することも突き止めた。

ホン博士は「sAgrinは、バクテリアで簡単に作製でき、機能を保ったまま精製できます。このことは将来的に治療薬の生産規模を拡大する上で非常に重要」と述べた。研究グループはsAgrinの前臨床動物試験の範囲を拡大し、最終的には臨床試験で検証する計画だ。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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