2023年02月
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「量子反跳」理論を80年ぶりに実証、正確なX線イメージングへの応用に期待 シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は1月20日、同大学の科学者らが、80年以上前に提唱されて以来初めて、量子反跳(Quantum recoil)と呼ばれる理論を実証したことを発表した。研究成果は学術誌 Nature Photonics に掲載された。

(提供:NTU)

量子反跳は、1940年にロシアの物理学者でノーベル賞受賞者のヴィタリー・ギンズブルグ(Vitaly Ginzburg)によって理論化されたもので、これまで実証されていなかった。量子反跳は、光の粒子性が物質中を移動する電子に大きな影響を与えることで、放出される放射線のエネルギーが古典的な予測からずれるとともに、減速している電子に影響を与え、電子の移動経路を狂わせるという現象だ。今回、初めて量子反跳の存在が実験的に示され、量子反跳によりX線のエネルギーが失うことが示唆された。この効果を考慮することで、特定のエネルギーレベルのX線をより正確に生成し、実用化できる可能性がある。

シンガポールの企業2社は、これまでの研究成果に基づいて申請した特許を利用し、より正確なX線装置の開発を行う。開発された装置は、人体組織サンプルの画像化や半導体チップの欠陥の検出に利用される予定だ。 研究を率いたNTU電気電子工学部のウォン・リャンジー(Wong Liang Jie)准教授は「今後は、量子反跳効果が大きいと予想される状況での研究などを計画している」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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