タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)は1月23日、国立金属材料技術研究センター(MTEC-NASDA)傘下にある持続可能な発展のための技術情報学研究所(TIIS)が建設資材の環境影響と循環指標(MCI)を評価するためのツールを開発したと発表した。開発されたツールは、タイのBCGエコノミー(バイオ・循環型・グリーンを重視する新経済モデル)に貢献し、ユーザーが使いやすく理解しやすい3Dシミュレーションモデルを導入した。このプロジェクトは、タイの競争力プログラム管理ユニット(PMUC)から資金の提供を受けた。
TIISの研究者であるノングヌッチ・プールサワド(Nongnuch Poolsawad)博士は、「建設業界は、インフラ開発の基盤であり、全ての産業の成長と発展を後押ししている。建設業界は国の発展において、重要な役割を果たしている。材料メーカーや建設業者、解体業者を含めた全てのプレーヤーが適切に事業を行わなければ、建設業界は環境に大きな負荷を与える可能性がある。TIISは、官民のパートナーと協力して、建設資材の環境影響評価とMCIデータを整備した」と話した。
このプロジェクトで取り扱う建設資材は、全部で13種類である。現在、5種類の建設資材(鉄筋、生コンクリート、セメント、断熱材、合板)のMCIデータを整備し、ウェブ上で公開している。残りの建設資材(レンガ、タイル、壁材、天井、ドアと窓、バスルーム備品、屋根材)のMCIデータは現在、準備中である。研究チームは、シンガポール国内にある全ての建設資材のMCIデータを整備するため、他の建設資材についてもデータベース化を計画している。
TIISは、建設資材に加えて、持続可能な建設工法を評価するためのツールも開発している。このことについて、プールサワド博士は、「TIISとパートナー企業が協力して、従来からある現場工法と現場に部品を持ち込み、組み立てするモジュール工法の環境指標を開発した」と話す。開発された環境指標は、BCI(建物循環指標)、LCC(ライフサイクルコスト)、GHG(温室効果ガス排出量)、CDW(建設・解体廃棄物)で構成される。開発されたツールは、建設資材と工法を選択することで、BCI、LCC、GHG、CDWに関わるデータが得られる仕組みとなっている。
(提供:いずれもNSTDA)
プールサワド博士は、「BCIデータは設計において、建物全体の性能を評価するのに非常に有用な指標になる。リサイクルされた建設資材とモジュール工法の組み合わせは、コストの掛かる選択となるが、LCCと環境影響を考慮すると好ましい選択だ。建設資材と工法を慎重に計画することで、廃棄物の大幅な削減が可能になる」としている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部