シンガポールの南洋理工大学(NTU)は1月30日、持続可能な社会に寄与する食品製造に関する革新的なソリューションを提案したと発表した。研究成果は、NTUの戦略的行動計画(NTU2025 strategic plan)の中の「人間活動の環境への配慮」に貢献するとしている。

気候変動によって引き起こされる干ばつや洪水は、増加する世界の人口に十分な食料を生産する能力を脅かしている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の予測によると、農作物の収穫量は2025年までに最大25%減少する可能性がある。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行はサプライチェーンを混乱させ、食料安全保障に影響を与えた。こうした状況によって、家禽からパーム油まであらゆる種類の食糧が不足し、食料品価格の高騰を招いている。

NTUの研究者は今回、食品廃棄物やこれまでにない供給源を活用して、オカラの再利用や乳化剤、代替肉、食用油に関する新たな製造方法を考案した。

食品廃棄物の活用では、ビール工場で廃棄される使用済み穀物からタンパク質を抽出し、乳化剤を製造した。植物ベースの乳化剤は、マヨネーズやホイップクリームなどに使われる乳製品や卵の代わりに使用できる。この方法で調製されたマヨネーズは、市販のマヨネーズと味は変わらないが、口当たりがよく、必須アミノ酸や抗酸化物質を多く含むという特徴がある。

NTUの食品科学技術プログラムのディレクターであるウィリアム・チェン(William Chen)教授は、「使用済み穀物などの食品廃棄物をアップサイクルすることは、サプライチェーンにおける処理効率を高めるだけでなく、植物ベースの代替タンパク質の利用の促進にもつながる」と述べた。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部