2023年03月
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作業現場でのスリップ・つまずき・転倒をリアルタイムで検知するスマートインソール開発 シンガポール《動画あり》

シンガポール国立大学 (NUS) は2月7日、NUSとNUS発のスタートアップ企業であるフレクソセンス (FlexoSense) 社が共同で職場でのスリップ・つまずき・転倒 (Slip, Trip and Fall:STF) を検知できるスマートインソールを開発したことを発表した。

リム・チュイ・テック (Lim Chwee Teck)教授(左)ら研究メンバー

国際労働機関(ILO)によると、世界中で毎日100万人以上の労働者が職場で負傷しており、その主な原因はスリップとつまずきといわれている。特に、建設業、海運業、製造業、運輸・倉庫業などではSTFのリスクを発見することが、職場の安全衛生において極めて重要なファクターとなっている。

NUSデザイン工学部生物医学工学科と医療技術研究所 (iHealthtech) のリム・チュイ・テック (Lim Chwee Teck) 教授が、フレクソセンス社と共同で開発したスマートインソールには足圧を測定する圧力センサーと、運動量の変化を測定する慣性計測ユニットセンサーが搭載されている。STFが発生すると体はSTFを解消するために足に圧力をかけてバランスを保とうとする。スマートインソールはこの圧力変化と人の体の向きを検知してSTFが発生しているかどうかを判断できる。さらに、高所からの落下といった通常とは異なる現象についても検出が可能だ。

インソールの側面
(提供:いずれもNUS)

リム教授は「スマートインソールを導入することで、通常報告されないSTFについての情報が取得可能となり、企業は職場においてリスクの高い場所を特定し予防策を講じることができる」とその意義を話す。フレクソセンス社の最高責任者であるチア・リー・ペン (Chia Lye Peng) 氏は「STFは生産性の低下、医療費、管理費の増加など、企業にとって大きなコスト要因となっている。私たちのスマートインソールは重大な事故を防ぎ、人的・金銭的コストの削減に役立つと信じている」と述べた。

研究チームは2022年5月にシンガポール海事港湾庁から、海洋イノベーションと技術に関するスタートアップ助成金を授与され、シンガポールの職場の安全・健康研究所やシンガポール海事産業協会と協力し、海事分野向けのスマートインソールの機能強化や微調整を進めている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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