2023年03月
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海洋性細菌からβ−ラクタマーゼ阻害活性を持つ化合物を発見 フィリピン

フィリピン科学技術省(DOST)は同国の研究者らが、海洋性細菌から抗生物質の効果を高めるためのβ−ラクタマーゼ阻害剤の候補を発見し、研究開発を進めていることを発表した。国営フィリピン通信社(PNA)が2月21日に伝えた。

ジュリアス・アダム・ロペス(Julius Adam Lopez)博士(左)ら研究チーム
(Photo courtesy of DOST)
(提供:PNA)

β−ラクタマーゼは、薬剤耐性菌が持つ抗菌薬への耐性機構の一つとして知られている。そのため、β−ラクタマーゼ阻害剤は抗生物質の有効性を高める重要な化合物である。フィリピンの帰国科学者(Balik-Scientist)のジュリアス・アダム・ロペス(Julius Adam Lopez)博士が率いる、海洋性β−ラクタマーゼ阻害剤(BLI)プロジェクトの研究チームは、フィリピンのパラワン州の海洋保護区であるトゥバタハ岩礁から採取した海底堆積物由来の細菌からβ−ラクタマーゼ阻害活性を持つ化合物を発見した。

DOSTのリア・ブエンディア(Leah Buendia)次官は「ロペス博士が発見したβ−ラクタマーゼ阻害剤は、抗生物質耐性菌に対応するために重要なものです。国内で原料を得られるため、安価な阻害剤を入手可能となるとともに、フィリピン人が新規の抗生物質開発の一翼を担うことも期待できます」と述べた。ロペス博士は「今回の発見はBLIプロジェクトの大きな目的の一部に過ぎない。通常、医薬品開発には10〜15年かかる。わずか2年でこの化合物が発見できたことは大きな成果だ」と発見の意義を語った。

BLIプロジェクトは2021年1月に開始され、2023年6月に終了予定のプロジェクトで、DOSTの支援を受けて進められている。これまでに1700万フィリピンペソの資金が提供された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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