2023年05月
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新規触媒を用いた硫黄ファーマコフォアの合成方法開発 シンガポール

シンガポールの南洋理工大学(NTU)は4月13日、同大学の研究チームが、新規の触媒を用いて、1つのキラル型のみをもつ硫黄ファーマコフォアを合成する方法について研究を進めていることを発表した。

タン・チュンホン(Tan Choon Hong)教授(左から2人目)ら研究チーム
(出典:NTU)

ファーマコフォアとは、病気の原因となる標的分子と相互作用する薬物分子の重要な官能基群とその立体配置も含めた概念である。硫黄基を含むファーマコフォアの中には、構造的に互いに鏡像となるキラルと呼ばれる2つのバージョンが存在するが、現在の合成方法では、キラル体を含む混合物が合成されてしまう。キラル体には毒性を持つものがあり、有毒な分子と無毒な分子を含む混合物を患者の治療に使用すると、意図しない副作用を引き起こす可能性がある。

今回、化学、化学工学、バイオテクノロジー学部のタン・チュンホン(Tan Choon Hong)教授が率いる研究チームは、この難題を克服するため、1つのキラル型のみを持つ硫黄ファーマコフォアの候補を合成する新しい方法を開発した。このプロセスには、有機化合物であるアシルクロリドに硫黄化合物を加えアルコール化合物と反応させる、非対称合成が用いられている。また、この反応の触媒として科学者たちが開発したペンタニジウムが使用されている。

この手法を使うことで、既存の薬に異なる硫黄基を持つファーマコフォアを付加して新たな治療法を生み出し、病気の治療薬の候補として科学者が製造・スクリーニングできる化合物の種類が増え、創薬プロセスを早めることができるようになると期待される。「将来的には、この方法で既存の薬を改良し、ゼロから始めることなく新しい治療法を開発できるようにしたい」とタン教授は強調した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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