シンガポールの南洋理工大学(NTU)は4月14日、同大学の研究者らが廃水処理施設中の細菌を利用して、より高温下でリンを除去する方法を発見したことを発表した。研究成果は学術誌Water Researchに掲載された。
ステファン・ウエルツ(Stefan Wuertz)教授 ©SCELSE.
(出典:NTU)
処理された廃水に含まれる高濃度のリンは、水域に排出されると藻類の急激な増殖を引き起こす。その藻類が死ぬ際、分解のために水中の酸素が奪われたり、毒素が放出されたりして、魚などの水生生物の大量死が引き起こされることがある。現在の生物学的なリンの除去方法は、25℃以下の低温下でしか利用できないため温暖な熱帯地方では不向きであり、地球温暖化が進む中、新たな方法が求められている。
NTUとシンガポール国立大学(NUS)環境生命科学工学センター(SCELSE)の科学者は、廃水処理施設に存在するCandidatus Accumulibacterという細菌を利用して、高温下でリンを除去する方法を発見した。
研究チームを率いたSCELSEの副センター長であるNTUのステファン・ウエルツ(Stefan Wuertz)教授は、「この細菌は、人にも環境にも害を及ぼしません。彼らは、排水から成長に必要な量以上のリンを取り込み、ポリリン酸の顆粒を合成し、栄養分を蓄えます」と述べている。最近の実験では、研究者たちは、pHが中性に保たれた30~35℃のリアクターで細菌を増殖させ、6時間後、廃水中のリンの大部分が除去されていることを発見した。さらにこの現象は、300日間にわたって観察された。研究に参加したシンガポールの公益事業庁(PUB)は、この研究結果を今後の水再生プラントの設計に反映させる予定だ。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部